イラストで見るEBPTの実践
第3回 「ガイドラインに従ってもEBPTにならないの?!」

2. ガイドラインとは?

新人理学療法士がネットでガイドラインを見つけ、先輩から助言を受けている場面
新人理学療法士がエビデンスと推奨度に関して、先輩から注意を受けている場面
先輩PT:
ガイドラインは見つかりましたか?
新人PT:
早速、医療情報サービスMindsを見つけました。その中に、大腿骨頚部/転子部(近位部)骨折のガイドラインもあり、第9章3節に「退院後のリハビリテーションは有効か」という項目がありました。そこには「退院後のリハビリテーション継続は有効である」と書いてありました。
先輩PT:
ガイドラインは、忙しい臨床業務の合間に検索するには非常に便利です。Mindsの他に、東邦大学メディアセンターのホームページもありますよ。こちらはMindsを包括したデータベースとなっています。
ガイドラインとは、医療者と患者が特定の臨床状況で適切な決断を下せるよう支援する目的で、体系的な方法に則って作成された文書(Minds診療ガイドライン作成の手引き2007)」といわれます。Mindsではエビデンスレベルを評価し、考慮していますので、「エビデンスに基づいたガイドライン」となるわけです。ガイドラインの詳細については東邦大学メディアセンターのホームページも参考にして下さい。
ガイドラインの特徴は、エビデンスレベルを提示し、かつ「推奨度」も示されているということです。
新人PT:
サイエンティフィックステートメントの部分に「高いレベルのエビデンスがある」と記載されていたので、それで十分と思っていましたが、エビデンスのレベルは理解していませんでした。また、「推奨」というのも、良く理解していませんでした。書いてある内容を見て、何となく判断したというのが本音です。
先輩PT:
ホームページの上の部分にも補足がリンクされているのですが、まずエビデンスのレベルから説明しましょう。ほとんどは下のようなAHRQの分類に従っています。
Ⅰa:メタアナリシス(メタ分析)システマティックレビュー(系統的総説)
Ⅰb:1つ以上のランダム化比較試験(RCT)
Ⅱa:1つ以上の準ランダム化比較試験(CCT)
Ⅱb:少なくとも1つのよくデザインされた準実験的研究
Ⅲ:比較試験や相関研究、ケースコントロール研究など、よくデザインされた非実験的記述的研究
Ⅳ:専門家委員会や権威者の意見(総説など)
(AHCPR(米国医療政策研究局[現:AHRQ])による)
Ⅰaは最も高いレベルのエビデンスであり、Ⅳは最も低いレベルという意味です。各研究デザインの用語は、インターネットに、たくさん解説されていますので勉強してみて下さい。
新人PT:
確かにいま、Googleで検索したら、たくさんでてきました。あとでまとめて覚えたいと思います。
先輩PT:
それでは次に「推奨度(Grade)」です。推奨度とは、ほとんどのガイドラインで「行うように強く勧める」から「行うべきではない」というように段階的に評価されます。この推奨度は、ガイドラインの作成委員会が、エビデンスのレベル・数・ばらつき、臨床的有効性の大きさ、臨床での適用性、害やコストなどを総合判断して決めています。エビデンスレベルも重要な決定要因ですが、必ずしもエビデンスのレベルと一致しないこともあります。
新人PT:
ということは、エビデンスのレベルが高いからといって、推奨度も高いとは限らないということですか?
先輩PT:
そうです。

第3回「ガイドラインに従ってもEBPTにならないの?!」 目次

2017年10月23日掲載

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