イラストで見るEBPTの実践
第3回 「ガイドラインに従ってもEBPTにならないの?!」

3. EBPTにおけるガイドラインの位置づけ

ガイドラインとEBPTとは同じではないことを示す場面
新人PT:
ガイドラインには、エビデンスレベルが記載されていますので、その指針に従がうことも、EBPTの実践と考えてよいのでしょうか?
先輩PT:
EBPTの実践においては、5つのステップに従う点が重要です。最近のガイドラインでは、可能な限りエビデンスレベルの高い研究論文を集約して提示します。これはステップ2の「質の高い情報の効率的収集」に該当すると考えられるでしょう。
「推奨度」とは、ガイドラインの作成委員会が、研究論文に基づいて指針の推奨度を判断するわけですので、これはステップ4の「情報の患者への適用」に該当します。
新人PT:
そうだとすると、ガイドラインではステップ1と3と5が抜けているわけですから、もしかしたらEBPTとガイドラインは異なるものなのでしょうか?
先輩PT:
その通りです。ステップ1の「疑問の定式化」に関しては、ガイドライン作成の最初の段階で行われていますが、広く一般化されたクリニカルクエスチョンとなります。EBPTでは、目の前の患者さんについて問題点や疑問点を抽出するわけですので、形式は同様でも、厳密には異なります。EBMの定義は「個々の患者の臨床問題に対して、(1)患者の意向、(2)治療者の専門技能、(3)臨床研究による実証報告を統合して判断を下し、最善の医療を提供する行動様式」です。
ですから、ガイドラインに従って判断しさえすればEBPTだ、というのは全くの勘違いになります。もちろん、ガイドラインは全く使えないと言っているわけではなく、ガイドラインはあくまで臨床指針ですから、システマティックレビューやメタアナリシスと同様に、EBPTのためには批判的吟味が必要です。そして、目の前の患者さんに対して、どうやって適用するかを考えなければならないですし、適用結果の分析も必要となるのです。
新人PT:
ガイドラインは非常に簡潔明瞭なので、全てを鵜呑みにするところでした。つまり、ガイドラインはEBPTの部分としての位置づけであり、いかに有効活用するか、ということを考えなければならない点が重要だということですね。少し見方が変わった気がします。
いろいろとありがとうございました。

第3回「ガイドラインに従ってもEBPTにならないの?!」 目次

2011年04月28日掲載

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