イラストで見るEBPTの実践
第4回 「アウトカム評価指標を臨床で活用しよう」

群馬大学 医学部 保健学科
臼田滋

イラスト執筆:
大阪電気通信大学 総合情報学部
デジタルアート・アニメーション学科
しもはたふゆ

3. 患者の○○さんに合った評価指標を発見!!

患者の○○さんに合った評価指標を発見!!
先輩PT:
StrokEDGEでは、5つの理学療法実施状況(急性期、入院、在宅、介護施設、外来)と、3つの患者の状況(発症後2ヶ月未満の急性期、2から6ヶ月の亜急性期、6ヶ月以上の慢性期)毎に4段階の推奨グレードが示されています。
4:強く推奨する;評価指標は優れた尺度特性と臨床的有用性がある
3:推奨する;評価指標は良好な尺度特性と臨床的有用性がある
2:現時点では推奨できない;この評価指標を推奨するための情報が不十分である
1:推奨しない;評価指標は尺度特性が不十分であり、臨床的有用性も低い
○○さんの現在の状況で、推奨グレードをみてみましょう。
新人PT:
○○さんは入院中で、亜急性期なので、8個の歩行に関連した評価指標の推奨グレードで両方が4なのは、6 Minute Walk(6MD:6分間歩行距離)とDynamic Gait Index(DGI)、Timed Up & Go(TUG)の3つでした。
先輩PT:
だいぶ絞られてきましたね。6MDは歩行持久性の評価指標、DGIは方向転換や障害物の回避などの動的な歩行能力の評価指標で、TUGは立ち上がり、歩行、方向転換の連続した動作をみる評価指標ですね。○○さんの現状では、歩行の実用性を測定したかったと思いますから、DGIを選んで、その内容を見てみましょうか。
新人PT:
テストの項目は、平地歩行での歩行速度の変更や頭部の運動、方向転換、障害物をまたぐ、それから階段昇降などの8課題があり、各課題について重症な障害の0点から正常の3点までの4段階で判定する評価指標です。合計点は、0点から24点に配点されて、高得点ほど能力が高いことを示します。靴箱やコーンが必要ですが、10分程度で測定ができるようです。
先輩PT:
項目の内容や評定の方法を確認すれば、臨床でも簡単に実施できそうですね。信頼性はどうですか?
新人PT:
新人PT: 脳卒中患者を対象にした再テスト信頼性と検者間信頼性が報告されています。どちらも高い信頼性が確認されているようです。
先輩PT:
妥当性はどうですか?
新人PT:
Functional Balance Scale(FBS)やTUG、歩行速度などとの併存的妥当性が脳卒中患者を対象に報告されていて、どれも中等度の相関関係があるようです。
先輩PT:
信頼性も妥当性も、良さそうですね。他の尺度特性についてはどうですか?
新人PT:
脳卒中患者を対象にした天井効果や床効果、反応性(患者の変化に対する感受性)については、報告されていないようです。
先輩PT:
分かりました。信頼性や妥当性は大丈夫そうですから、○○さんに実際に使ってみましょう。
新人PT:
ありがとうございました。それでは、○○さんにDGIの目的や内容を説明して、同意が得られたら測定してみます。

第4回 「アウトカム評価指標を臨床で活用しよう」 目次

2011年09月02日掲載

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