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第3回 「肩関節周囲炎における関節可動域制限に対するプログラム」
EBPTワークシート
第3回 「肩関節周囲炎における関節可動域制限に対するプログラム」
信州大学医学部附属病院
高橋友明
ステップ1.
PICO
の定式化→
クリニカルクエッション
ステップ1の詳細解説へ
Patient(患者)
肩関節周囲炎(五十肩)の診断をうけた患者
Intervention(介入)
肩甲上腕関節の運動と肩甲胸郭関節の運動を組み合わせて実施すると
Comparison(比較)
肩甲上腕関節の運動のみと比較して
アウトカム
肩関節可動域と肩関節痛に改善が得られるか?
ステップ2. 検索文献
ステップ2の詳細解説へ
(
一次資料
・
二次資料
)
検索式
PubMedにてキーワード「Frozen shoulder・Physical therapy・Range of motion」 Limits:randomized controlled trial・published in the last 10 yearsで検索した結果、39件ヒット。その中から、本症例のPICOと合致した文献(下記参照)を採用した。
論文タイトル
Comparison of the outcomes of two different exercise programs on frozen shoulder
著者
Celik D
雑誌名
Acta Orthopaedica et Traumatologica Turcica.44(4):285‐292,2010.
目的
五十肩と診断された患者に対して, 肩甲上腕関節の運動のみを実施する場合と、肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の2つの運動を組み合わせて実施する場合の2つの異なる運動プログラムが、肩関節可動域と肩関節痛および機能的結果に与える影響を明らかにした。
研究デザイン
RCT
対象患者
五十肩と診断された患者29名。ただし、神経根障害・胸郭出口症候群・リウマチ・骨折や上肢の腫瘍・肩の筋力障害が起きている神経障害のある対象は除外した。
介入
対象者を、肩甲上腕関節の運動のみを実施する群(GroupⅠ)と肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の2つの運動を組み合わせて実施する群(GroupⅡ)とにランダムに振り分けた。両群とも肩甲上腕関節の運動は、理学療法士による他動運動と自動運動が施行され、GroupⅡではそれに加え肩甲胸郭関節の運動が施行された。頻度は、両群とも1日1回、週5回、クリニックにて理学療法士の監視下にて施行された。
主要評価項目
肩関節痛(VAS)、肩関節可動域(屈曲、外旋、内旋の3方向)、Modified Constant scoreの3項目について、開始時・開始後6週・開始後12週において評価した。
結果
両群とも、肩関節痛(VAS)、肩関節可動域(屈曲、外旋、内旋の3方向)、Modified Constant scoreの3項目について、開始時と開始後6週、開始後6週と開始後12週のいずれの時期においても有意に改善した。
肩関節痛(VAS)の項目について、開始後6週においてGroupⅡはGroupⅠに比較して有意に低下していた。
肩関節可動域(屈曲)の項目について、開始後12週においてGroupⅡはGroupⅠに比較して有意に改善していた。その他の項目において、有意差は認めなかった。
結論
五十肩と診断された患者に対して, 肩甲上腕関節の運動のみを実施する場合よりは、肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の2つの運動を組み合わせて実施する方が、肩関節痛の軽減と肩関節可動域の改善に影響を与えると考えられた。
ステップ3. 検索文献の
批判的吟味
ステップ3の詳細解説へ
研究デザインは適切である (
ランダム化比較試験
である)
比較した群間の
ベースライン
は同様である
盲検法(ブラインディング)
されている (
一重盲検・
二重盲検)
患者数は十分に多い→
サンプルサイズ
割り付け時の対象者の85%以上が介入効果の判定対象となっている
脱落
者を割り付け時のグループに含めて解析している→
治療企図解析(ITT解析)
統計的解析方法
は妥当である
結果と考察との論理的整合性が認められる
ステップ4. 臨床適用の可能性
ステップ4の詳細解説へ
エビデンス
の臨床像は自分の患者に近い
臨床適用が困難と思われるような禁忌条件・合併症等のリスクファクターはない
倫理的問題はない
自分の臨床能力として実施可能である
自分の施設における理学療法機器を用いて実施できる
カンファレンス等における介入計画の提案に対してリハチームの同意が得られた
エビデンスに基づいた理学療法士としての
臨床判断
に対して患者の同意が得られた
その他
具体的な介入方針
肩関節周囲炎(五十肩)の診断をうけた患者に対して、肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節の2つの運動を組み合わせて実施する。理学療法士による他動運動と自動運動が施行され、頻度は、両群とも1日1回、週3回、理学療法士の監視下にて施行された。肩関節痛(VAS)、肩関節可動域(屈曲、外旋、内旋の3方向)の2項目について、開始時・開始後6週・開始後12週において評価した。
注意事項
理学療法士による肩甲上腕関節の他動運動と自動運動が施行される際、肩関節痛が増悪しないような強度で施行した。
ステップ5. 適用結果の分析
ステップ5の詳細解説へ
患者は、予定していた計画通りに評価を実施できた。各時期における肩関節痛(VAS)、肩関節可動域(屈曲、外旋、内旋の3方向)の結果を下表に示す。 結果、経過とともに肩関節痛(VAS)の低下と肩関節可動域(屈曲、外旋、内旋の3方向)の改善が得られた。このことより、肩甲胸郭関節を含めた理学療法による治療が疼痛の軽減と可動域の拡大に影響を与えたのではないかと考えられた。
評価項目
開始時
開始後6週
開始後12週
VAS
8.5
5.3
2.2
屈曲角度
80°
100°
130°
下垂位外旋角度
0°
10°
40°
下垂位内旋角度
0°
10°
30°
ステップ2でPICOに適合した文献を見つけることができ、ステップ3では、大きな問題なく批判的吟味を施行することができた。そのため、ステップ4・5では検索文献で示された介入方法にほぼ則して、具体的介入の成果を確かめることができた。
第3回「肩関節周囲炎における関節可動域制限に対するプログラム」 目次
PICO の定式化
検索文献
検索文献の批判的吟味
臨床適用の可能性
適用結果の分析
2012年03月23日掲載
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イラストで見るEBPTの実践
第1回 「EBPT はじめの一歩」
第2回 「アウトカムってなに?」
第3回 「ガイドラインに従ってもEBPTにならないの?!」
第4回 「アウトカム評価指標を臨床で活用しよう」
第5回 「論文を活用して患者の予後を探ってみよう!」
第6回 「中枢神経疾患治療に新しい風を送ろう」
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EBMに関係するサイトおよび文献データベース紹介(国内)
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