変形性膝関節症は関節性変化に加え、筋力の低下により歩行や階段昇降などの動作で膝関節に大きな負担をかけることによって増悪していくという疾患だと言われています。特に筋力の低下に関して大腿四頭筋の低下が主な原因と一般的に言われていますが、過去の研究から大腿四頭筋だけでなく下肢全体に筋力低下を認めるとの報告があります。また、変形性膝関節症の患者において疼痛が出現しやすい立ち上がり動作や歩行、階段昇降等は大腿四頭筋だけでなく股関節周囲筋や足関節も重要な働きをします。そこで今回、股関節の筋力増強は膝関節の負担軽減につながるのではないかと仮説をたて、実際にどのくらいの効果があるか知りたいという目的にてPICOを設定しました。ステップ2ではその視点で設定したPICOと合致した文献を検索しました。ステップ3では大きな問題なく批判的吟味を施行することができました。そのため、ステップ4・5では検索文献で示された介入方法にほぼ則して、具体的介入の成果(股関節筋の強化が疼痛の軽減につながること)を確かめることができました。従来提唱される膝関節周囲筋のトレーニングに加え股関節周囲筋のトレーニングも重要であると実感できました。しかし、本文では「股関節筋力の増強は内側膝負荷に影響を及ぼさなかった。」と記載されていることから股関節筋力が病態進行抑制に影響はしないと考えます。しかし、股関節筋力は歩行時に下肢全体の安定性を増し異常動作を抑制する際には股関節内転・外転筋力の貢献度が高く、このことに注目した運動療法はADLの維持・改善、QOLの向上に有効であると考えられました。