年齢 | 70代後半 |
性別 | 女性 |
診断名 | 下部消化管穿孔、急性汎発性腹膜炎 |
手術名 | 急性汎発性腹膜炎手術 |
障害名 | 廃用症候群 |
現病歴 | 腹痛により救急病院を受診、上記診断にて手術治療が行われた。 術後24病日でリハビリテーション継続目的に当院転院。 |
既往歴 | 陳旧性心筋梗塞、腰部脊柱管狭窄症、変形性膝関節症 |
身体組成 | BMI 15.0Kg/m2 |
疼痛 | 腰痛、右膝関節痛 |
長谷川式簡易知能評価スケール | 24点 |
下肢筋力(MMT) | 両側4レベル |
TUG(Timed Up and Go Test) | 18.21秒 |
10m歩行テスト(最大歩行) | 12.54秒 0.78m/秒 |
移動能力 | 歩行器を使用して病棟内の歩行は見守り |
Functional Ambulation Categories(FAC)※ | 3点 |
Barthel Index(BI) | 移乗10点、歩行10点、階段昇降5点 |
Patient (患者) | 入院中の高齢患者 |
Intervention (介入) | 入院中に実施する通常の理学療法(運動療法および日常生活動作練習)に、漸増抵抗運動を追加する |
Comparison(比較) | 通常の理学療法のみ |
Outcome (効果) | 歩行能力や日常生活動作能力は向上するか? |
検索式 | PEDroのAdvanced searchにてキーワード「Hospital、functional outcome」、Therapy:strength training、Problem:frailty、Subdiscipline:gerontology、Methods:Clinical trial、Publish since:2013で検索した結果、7件ヒット。本症例のPICOに近く、介入の参考になる文献と判断し、下記の論文を選択した。 |
論文タイトル | Does progressive resistance strength training as additional training have any measured effect on functional outcomes in older hospitalized patients? A single-blinded randomized controlled trial. |
著者 | Tibaek S, Andersen CW, Pedersen SF, Rudolf KS. |
雑誌名 | Clinical rehabilitation 2014, 28(4): 319-328. |
目的 | 入院中の高齢患者に対して、通常の理学療法に漸増抵抗運動を追加することが機能的帰結に与える影響を調査すること。 |
研究デザイン | ランダム化比較試験(RCT) |
対象 | 2006年9月1日~2008年1月1日までにコペンハーゲン大学病院(デンマーク)老年リハビリテーション科に入院、治療を受けた者(入院時の診断は下肢骨折、腹部の悪性腫瘍、肺疾患、脳卒中など)のうち、医師により理学療法が処方された高齢患者を対象とした。採用基準は、歩行補助具やベッド/ベンチサポートの有無に関わらず独立して立位保持が可能な者。除外基準は、予測される入院期間が7日未満の者、認知機能障害がある者、医療スタッフの評価により意思疎通、活動が困難と判断された者。これらの基準を満たし、研究参加への同意が得られた71名。対象は通常の理学療法に漸増抵抗運動を追加する治療群(36名)と通常の理学療法のみを行う対照群(35名に)無作為に割り付けられた。 |
介入 | 両群ともに入院期間を通して通常の個別の理学療法(標準的治療)を受けた。治療群のみ以下の漸増抵抗運動を追加した。 漸増抵抗運動(対象を6グループに分け、2名のPTの監督下で実施)
・砂嚢を入れたバックパックを背負って起立練習 ・足首周りをゴムバンドで固定して横歩き ・砂嚢を入れたバックパックを背負い、段差を使用して踵上げ運動 ・負荷調整可能な段差昇降マシン(Power-step) 運動強度は、患者の自覚的運動強度が修正ボルグスケールで軽度から中等度である場合、15回以上の反復運動が可能となった場合に、砂嚢を0.5Kgずつ増量、ゴムバンドを異なる抵抗に変更して調整した。 |
主要評価項目 | TUG、30-second chair stand test(CS-30)、10MWT(最大歩行)、BI(移乗、歩行、階段昇降)、歩行補助具を介入前および退院前に評価した。 |
結果 | 対象のうち、治療群7名、対照群8名、合計15名(21%)がドロップアウトした。 治療群では介入前後において全ての項目で有意な改善を認めた。一方で対照群においては、10m歩行テスト(P=0.06)、BIの歩行(P=0.19)の2項目で有意な改善が認められなかった。 2群間の比較では、各項目の改善に有意差は認められなかった。BIの階段昇降について、対照群と比較して治療群における改善の傾向(P=0.05)が示されたのみであった。 2群間の有意差は認められなかったが、混合効果モデルによる解析では、改善の効果量については、全ての項目において対照群に比して治療群における改善がより大きかった。 |
結論 | 入院中の高齢患者に対して、通常の理学療法に漸増抵抗運動を追加した群と、通常の理学療法のみ実施した群との比較では、機能的帰結に有意差は認められなかった。改善の効果については、対照群に比して治療群でより大きな改善が示された。 |
具体的な介入方針 | 介入前、2日間で身体計測、主要評価項目、等尺性膝伸展筋力の評価、測定を実施した。 通常の個別理学療法は、起立・歩行練習や床上動作練習など自宅での生活に向けた動作練習を中心に週6~7回実施した。 漸増抵抗運動は、評価終了の翌日から2日に1回の頻度で通常の個別理学療法に追加して実施した。プログラムは文献内の内容に準じて計画したが、当院には段差昇降マシン(Power-step)が無いため、運動強度の調整が可能なレッグプレスマシンを使用した抵抗運動に変更した。 運動強度は、1セットの反復回数が12-15回となるよう設定し、運動時には修正ボルグスケールを表示して、自覚的運動強度が中等度以下とならないよう調整した。 介入期間は退院までの27日間。漸増抵抗運動は全13回の実施を予定した。 介入後の評価として、主要評価項目、等尺性膝伸展筋力の評価、測定を退院前日に実施した。 |
注意事項 | 症例は、運動器疾患の既往を有し、腰痛や膝関節痛を訴えていることから、運動実施による疼痛増悪や過度な疲労に注意して実施する。 |
介入前 | 退院時(27日後) | |
TUG(秒) | 18.2 | 14.5 |
10m歩行テスト(秒) | 12.5 | 10.4 |
歩行速度(m/秒) | 0.80 | 0.96 |
CS-30(回) | 8 | 13 |
BI「移乗」(点) 「歩行」(点) 「階段昇降」(点) |
10 10 5 |
15 15 5 |
FAC(点) | 3(歩行器) | 4(歩行器) |
等尺性膝伸展筋力(Nm/Kg) | Rt 0.99 Lt 1.10 |
Rt 1.14 Lt 1.46 |
2019年04月10日掲載