一症例報告の結果であり,多様な障害を呈する脳卒中患者へ介入を試みる場合は,損傷部位によって異なる高次脳機能や身体機能障害の病態ごとに適応を考慮する必要があると考えます.また,本症例では,14日間の短期間に同じ評価を3回繰り返しており,TMT-Aの数字の配置を覚えてしまうなどの測定バイアスが生じていた可能性があります.また,介入後のフォローアップ期間は7日間のみであり,最終的なアウトカムである転倒の発生が中長期的にどのような経過であったか追跡する必要があり,本症例報告の限界になると考えます.一方でPICOの検索式の結果から反映されるように,注意障害を呈した脳卒中者の転倒リスクを軽減する歩行練習は確立されておらず,本症例報告において一定の効果が認められたことは有意義であったと考えます.