年齢 | 50歳代 |
性別 | 男性 |
診断名 | パーキンソン病 |
現病歴 | 40歳代に右手の安静時振戦が出現、パーキンソン病と診断。L-dopa内服にて経過を見ていたが、次第にジスキネジアやオンオフ現象が強く出現するようになり、3年前にSTN-DBS実施。今回利用していた施設の使用ができなったことで運動機会が減り、リコンディショニングを目的に当センターに入院。 |
既往歴 | パニック発作 |
評価項目 | |
Hoehn & Yahr Stage | 2度 |
MDS-UPDRS partⅢ | 39点 |
ジスキネジア | なし(内服前後に出現はみられる) |
Berg Balance Scale | 54点 |
10m歩行テスト(快適) ※計測条件:独歩 |
時間:11”01 歩数:23歩 ※歩行速度:0.91m/s ※ケイデンス:125.3steps/min ※ストライド長:0.87m |
6分間歩行距離 ※計測条件:独歩 |
230m(Borgスケール 実施前10→実施後17) ※途中休憩あり ※2分間歩行距離:90m |
TUG ※計測条件:独歩 |
15”36(実施中のすくみ足なし) |
歩容 | ・すくみ足:なし ・小刻み歩行:あり ・すり足歩行:あり |
Patient (患者) | パーキンソン病患者に対して |
Intervention (介入) | 部分免荷トレッドミル歩行練習は |
Comparison(比較) | 従来の歩行練習と比較して |
Outcome (効果) | 歩行能力の改善に効果的であるか |
検索式 | PubMedにて検索式「"parkinson disease" AND "body weight-supported treadmill training" AND "randomized controlled trial" 」で検索した。その結果、5件が抽出された。その中で、本症例のPICOに近い論文を採用した。 |
論文タイトル | Partial Body Weight-Supported Treadmill Training in Patients With Parkinson Disease: Impact on Gait and Clinical Manifestation |
著者 | Ganesan M, Sathyaprabha TN, Pal PK, et al |
書誌情報 | Arch Phys Med Rehabil. 2015 Sep;96(9):1557-65. |
目的 | パーキンソン病患者において、従来の歩行練習と部分免荷トレッドミル歩行練習が歩行および臨床所見に及ぼす影響を評価すること。 |
研究デザイン | Prospective experimental research design(実験的研究デザイン) |
対象 | パーキンソン病を罹患された方60名(平均年齢:58.15±8.7歳、身長:160±6.9cm、体重:60.38±10.5kg) 除外基準:MMSEが24点以下、 Beck Depression Inventory scoresが17点以上、Goetz dyskinesia scoresが4点以上、 Hoehn & Yahr Stageが4度以上、予測不能な運動変動や歩行訓練に影響を与える整形外科の問題を有すること |
介入 | NEPD(nonexercising Parkinson disease)グループ 投薬以外、特定のトレーニングを受けない。普段の日常生活活動は推奨されていた。 CGT(conventional gait training)グループ 直進や方向転換、腕振りを意識した歩行練習。その際に大きく歩幅を取ることや腕振りを意識させるための聴覚Cueを実施。 PWSTT(partial weight-supported treadmill training)グループ 体重の20%を免荷させた状態でトレッドミル歩行練習。 ※CGTグループ、PWSTTグループの共通条件 ・快適歩行速度 ・10分間の歩行を3セッション(2分間のインターバル) ・1週間に4回(合計16回) ・共に前後に5分間のウォーミングアップとクールダウン |
主要評価項目 | ベースライン、2週間後、4週間後(共にベストOn状態)に評価 ・臨床所見評価:UPDRS{総得点、運動項目(PartⅢ)、下位項目} ・歩行評価:快適歩行速度(10m歩行テスト)、2分間トレッドミル歩行テスト※ ※歩幅、歩行距離、歩行速度、左右変動、歩行指数 |
結果 | すべての参加者が脱落なく実施でき、悪影響の報告もなかった。 4週間のCGTおよびPWSTTでの歩行練習は、UPDRSスコアとそのサブスコア、および歩行パフォーマンスを有意に改善させた。さらにPWSTTはCGTよりもほとんどの評価において有意に優れていた。 ※PWSTTでは、介入2週間時点においても、UPDRSスコアや歩行速度、歩行距離の有意な改善がみられていた。 |
結論 | CGTとPWSTTのそれぞれ、パーキンソン病患者の歩行リハビリテーションに有益である。さらに、PWSTTはCGTよりも臨床所見や歩行アウトカムをより改善させる。 |
具体的な介入方針 | 本症例はMIBG心筋シンチグラフィーによりパーキンソン病と診断され、その後内服加療やSTN-DBSを実施され生活をしていた。なお、今回当センターにリコンディショニング目的に短期入院された本症例は、採用論文の対象者に近く除外基準には該当しなかった。 介入は通常の理学療法(ストレッチ、筋力強化、立位練習など)に加え、PWSTTを実施した。PWSTTの設定については、採用論文同様に20%の体重免荷と快適歩行速度とした。なお、採用論文は1回30分(10分間×3セッション(2分間のインターバル))の介入を週4回・4週間実施していたが、本症例はそれに耐えうるほどの耐久性がなく、本人の疲労に合わせ、3〜5分×2〜3セットで実施した。また、本症例の入院期間に合わせて、介入期間は週5回・2週間とした。 ※介入期間中に運動機能に大きく影響を与えるような薬剤調整やDBSの刺激調整は実施されなかった。 |
注意事項 | 歩行実施時間やインターバルについては、患者の歩行能力やバイタル変化に合わせて適切に設定する必要がある。 トレッドミルの速度に合わせて歩行を実施するため、歩き始めや疲労などによりリズムが崩れ転倒する可能性がある。 体重免荷のためにハーネスを着用するため、DBSの充電池埋め込み部分の圧迫がないか注意する必要がある。 |
評価項目 | 介入前 | 介入後 |
Hoehn & Yahr Stage | 2度 | 2度 |
MDS-UPDRS partⅢ | 39点 | 30点 |
ジスキネジア | なし(内服前後に出現はみられる) | なし(内服前後に出現はみられる) |
Berg Balance Scale | 54点 | 56点 |
10m歩行テスト(快適) ※計測条件:独歩 |
時間:11”01 歩数:23歩 ※歩行速度:0.91m/s ※ケイデンス:125.3steps/min ※ストライド長:0.87m |
時間:9”03 歩数:19歩 ※歩行速度:1.11m/s ※ケイデンス:126.2steps/min ※ストライド長:1.06m |
6分間歩行距離 ※計測条件:独歩 |
230m(Borgスケール 実施前10→実施後17) ※途中休憩あり ※2分間歩行距離:90m |
375m(Borgスケール 実施前11→実施後13) ※途中休憩なし ※2分間歩行距離:120m |
TUG ※計測条件:独歩 |
15”36(実施中のすくみ足なし) | 10”87(実施中のすくみ足なし) |
歩容 | ・すくみ足:なし ・小刻み歩行:あり ・すり足歩行:あり |
・すくみ足:なし ・小刻み歩行:なし ・すり足歩行:あり |
2020年07月01日掲載