低頻度電気刺激を併用した高齢変形性股関節症患者に対する人工関節置換術後の理学療法
Gremeaux, V. Renault, J. Pardon, L. Deley, G. Lepers, R. Casillas, J M.: Low-frequency electric muscle stimulation combined with physical therapy after total hip arthroplasty for hip osteoarthritis in elderly patients: A randomized control trial. Arch Phys Med Rehabil 2008;89:2265-73.
PubMed PMID:19061737
- No.0910-2
- 執筆担当：
山形県立保健医療大学
保健医療学部
理学療法学科 - 掲載：2009年10月9日
【論文の概要】
Objective
本研究は変形性股関節症患者（Hip Osteoarthritis患者= Hip OA患者）の人工股関節置換術後（Total Hip Arthroplasty術後 = THA術後）に通常用いられる低頻度電気刺激（Low-Frequency Electric Muscle Stimulation = LFEMS）の有効性を評価するために行った。
Design：研究デザインは無作為コントロールstudyで、術前後の評価によってその有効性を検討した。
Design：研究デザインは無作為コントロールstudyで、術前後の評価によってその有効性を検討した。
Participants
対象はTHA術後のHip OA患者29名で、低頻度電気刺激群16名（Low-Frequency Electric Muscle Stimulation Group = LFEMS group）とコントロール群（Control group = Con Group）13名の2つに分けた。
Interventions
LFEM groupは両側の大腿四頭筋と腓腹筋に低頻度電気刺激と通常の理学療法（Conventional Physical Therapy: ROM訓練、筋トレーニング、運動機能回復訓練）を行った。
電気刺激は10Hzの2相性電流（10Hz biphasic current）、パルス幅200ms、20秒のon-offサイクルを用いた。刺激強度は患者が耐えうる強さまで上げて使用した。
1セッション1時間、週5回、5週間の電気刺激計25セッション行い、これに加え通常の理学療法を2時間、週5回、5週間訓練を行った。Con groupはLFEM groupと同様の理学療法を5週間行った。
電気刺激は10Hzの2相性電流（10Hz biphasic current）、パルス幅200ms、20秒のon-offサイクルを用いた。刺激強度は患者が耐えうる強さまで上げて使用した。
1セッション1時間、週5回、5週間の電気刺激計25セッション行い、これに加え通常の理学療法を2時間、週5回、5週間訓練を行った。Con groupはLFEM groupと同様の理学療法を5週間行った。
Main outcome
訓練効果の評価は訓練初日と45日目に行った。測定パラメータは両側膝の等尺性最大筋力、FIM、6分間歩行テスト、速歩による200m歩行、入院期間であった。
Results
低頻度電気刺激によって手術側の大腿四頭筋の筋力が改善し、手術側と非手術側の筋力のアンバランスが改善された。入院期間、歩行能力の改善に関しては2群において有意な差はないが、電気刺激群はFIMにおいてより多くの改善項目を示した。
Discussion
筋力の改善と歩行能力との関係は線形な関係でなく、両者には時間的なずれがある。したがって、筋力が改善しても歩行能力に改善がみられないのはリーズナブルな結果である。電気刺激は両側の筋力のアンバランスを矯正し、これによって非術側への負荷を軽減し、歩行補助具の使用を減少させる。またこの事はFIMにおいて自立能を高める一因となり、さらに、バランスの改善は歩行の非対称性を減少させ、歩行時の代謝コストや転倒事故を減少させる。低周波電気刺激は使用に際して痛みに対して抵抗性が良く、高齢者に対して筋力を増加させるのに適している。
【解説】
電気刺激の効果とそのメカニズムは論争中である。以下にその参考文献を挙げる。
興味のある方は以下の論文を参照して下さい。
10Hzの電気刺激では遅筋線維の筋肉の代謝活動が増加するという説がある[1.]。脊髄損傷患者や心疾患患者に対する電気刺激は末梢の動脈血管運動を改善するという報告がある[2.3.]。低周波電気刺激による遅筋線維の代謝活動の増加は、遅筋線維の割合の増加と関係している[4.]。疲労に対する抵抗性から、特にミトコンドリアの増加や毛細血管密度の増加など他の構造的な適応が報告されている[4.5.]。高周波電気刺激は速筋線維に作用し、筋力を増加し、疲労に対する抵抗性を増す[6.]。一方、低周波電気刺激は、耐久性を改善する[7.]。理論的には、高周波電気刺激は重度の廃用性筋萎縮に対して用いられ、通常高齢者には受け入れがたい[8.]。用いる電気刺激の周波数の違いによって、その効果が異なる[8.9.10.]。中および高周波電気刺激に比べて、低周波電気刺激は痛みに対して抵抗性が良く、高齢者に対して筋力を増加させるに適していると本論文は報告している。
興味のある方は以下の論文を参照して下さい。
10Hzの電気刺激では遅筋線維の筋肉の代謝活動が増加するという説がある[1.]。脊髄損傷患者や心疾患患者に対する電気刺激は末梢の動脈血管運動を改善するという報告がある[2.3.]。低周波電気刺激による遅筋線維の代謝活動の増加は、遅筋線維の割合の増加と関係している[4.]。疲労に対する抵抗性から、特にミトコンドリアの増加や毛細血管密度の増加など他の構造的な適応が報告されている[4.5.]。高周波電気刺激は速筋線維に作用し、筋力を増加し、疲労に対する抵抗性を増す[6.]。一方、低周波電気刺激は、耐久性を改善する[7.]。理論的には、高周波電気刺激は重度の廃用性筋萎縮に対して用いられ、通常高齢者には受け入れがたい[8.]。用いる電気刺激の周波数の違いによって、その効果が異なる[8.9.10.]。中および高周波電気刺激に比べて、低周波電気刺激は痛みに対して抵抗性が良く、高齢者に対して筋力を増加させるに適していると本論文は報告している。
【引用文献】
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2009年10月09日掲載
