シャルコー・マリー・トゥース病の痛みを伴った凹足の足圧特徴

Crosbie, J. Burns, J. Ouvrier, RA. : Pressure characteristics in painful pes cavus feet resulting from Charcot-Marie-Tooth disease. Gait Posture. 2008 Nov; 28(4):545-51.

PubMed PMID:18456499

  • No.1007-2
  • 執筆担当:
    山形県立保健医療大学
    保健医療学部
    理学療法学科
  • 掲載:2010年7月10日

【論文の概要】

Introduction

シャルコー・マリー・トゥース(Charcot-Marie-Tooth = CMT)病はしばしば末梢の筋のアンバランスより有痛性凹足を呈し、病期の進行とともに足部の変形が進行し拘縮を呈する。本研究の目的は、足部底屈圧と痛みに対して凹足が及ぼす影響を調べ、足部底屈圧と痛みとの関係を調査することである。

Subjects and Methods

16名のCMT病患者(男性7名、女性9名、年齢31-82歳、type1A-9名、type2-2名、type不明-4名、X-linked-1名)。
全員が足部痛を有しており、その期間は1ケ月から240ケ月で平均77.3ケ月であった。足部痛は裸足または靴装着で有しておりその痛みは慢性的であった。両足に痛みをもっている割合は50%で、ほとんどのケースは中足骨痛、種子骨痛、midfoot osteoarthritisなどの診断名がついていた。後足部、中足部、前足部に痛みがあるケースはそれぞれ68%、56%、88%であった。凹足の存在とその重症度はRedmondらによるfoot posture index (FPI)で評価した[1.]。-12は著しい凹足、+12は著しい扁平足を意味する。足部の背屈角度はlunge testによって評価した[2.]。また、足部の痛みと機能評価はself-report foot health status questionnaire (FHSQ)でスコアー化した[3.]。また、SF-36の4項目(身体機能、全体的健康観、日常の役割、社会的役割)を評価した。足部底屈圧はcontrol shoeを装着して、Novel Pedar-mobile-in-shoe systemを用いて測定した。データは10m歩行路を快適な速度で歩行して収集した。足部底屈圧は前足部、中足部、後足部の3つの領域に分けられ、それぞれの領域のpeak pressure、mean pressure、pressure-time integral、contact durationを測定した。臨床的にもっとも症状がある側の足部を測定した。

Results

症状の期間は年齢、性差とは関係なかった。SF-36の全体的な健康観は年齢を従属変数とする3次の負の回帰曲線で近似できた。健康に関するQOL変数は、社会的役割以外のすべての変数においてオーストラリア人の平均より有意に低かった。足部の痛みの強さは年齢、性差、BMIとは関係がなかった。足部の3つの領域に痛みがあるケースはFPIの足部の形において有意に低いスコアーを示した。前足部のmean pressureが他のどの領域より大きかった。中足部と後足部のmean pressureの差はなかった。同様な傾向はpressure-time integralにおいてもみられた。peak pressureの値は前足部で有意に大きく、また中足部よりも後足部において有意に大きかった。mean pressure、peak pressure、pressure-time integralとFPIは曲線的な関係を有しており、統計学的に有意な回帰が可能であった。また、痛みとfoot pressureとの関係では有意な関係がなく、痛みを訴える被験者と訴えない被験者との間でfoot pressureの値に有意な差はなかった。contact durationは前足部において有意に大きな値を示した。痛みの強さとcontact durationとの間には有意な関係はなかった。

Discussion and conclusion

足部の凹足変形が進むと内側アーチが高くなり、後足部および前足部の圧が増加する。このようなパターンは突発性の凹足にみられる。末梢神経性CMT病のケースにおいては2つの異なるパターンがある。前脛骨筋と短腓骨筋の弱化があり、後脛骨筋と長腓骨筋の筋力が比較的保たれているタイプで、足関節周りの筋のアンバランスが生じ、足部の内反が進み、中足部の外側部に体重が移動する。もうひとつのタイプは典型的なheel strike-foot flat-heel offパターンをとらないケースで、前足部から床につくような操り人形のような歩き方をするタイプである。

一般に、凹足が進行すると前足部と中足部の圧が増加し、後足部の圧が減少する。この減少は後足部の痛みとは関係なく、痛みの有無によっても圧に差がなかった。また、FHSQと痛みの部位、SF-36と痛みの部位との間には関係性がみられなかった。凹足がひどくなるほど、3つの足部の領域に痛みが増加した。しかしながら、痛みの分布と痛みの強さは一致しなかった。また、足部の姿勢と痛みの強さとの関連性も見出すことができなかった。足圧と痛みは互いに影響しあうことはなかった。痛みが強くなれば足圧が減少する(antalgic strategy)、あるいは足圧の増加が痛みを起こす(load concentration)、これらの2つの現象が考えられるが、本研究結果はこのどちらでもなかった。凹足の程度と足圧のパターン、痛みの強さと痛みの部位との関連性は見出すことができなかった。さらに症例数を増やし、これらの関係を検討する必要がある。

【解説】

本研究のユニークな点はFoot Posture Index (=FPI)を独立変数として、中足部および前足部のmean pressure、peak pressure、pressure-time integralを3次の曲線で回帰した点である。凹足の障害が重いほど中足部および前足部の圧が大きくなる。決定係数が0.25~0.54と従属変数によって違いがあるが、CMT病患者の凹足の程度によって足部の領域の圧を推定できる。
凹足の重症度の評価指標として用いたFPIは、文献[1.]と参考 URL[1.]を参照してください。詳細なマニュアルが参照できます。また、足部背屈角度はlunge testによって評価したとあるが、lungeとはフェンシングの突きの基本姿勢を意味し、両手を壁につけて検査測の踵を床につけ、後方に伸ばした姿勢で足部背屈角度を測定する手法である。詳細は文献[2.]を参照してください。写真入りで紹介しています。
本研究ではQOLに関連する足部の健康状態を self-report foot health status questionnaire (FHSQ)でスコアー化している。この質問票は足部の痛み、足部の機能、足部の一般的状態、履物などの4つの大きな領域から成り、総計13項目からなる質問票である。その詳細は文献[3.]および参考URL[2.]を参照してください。

【参考文献】

2010年07月10日掲載

PAGETOP