慢性閉塞性肺疾患患者における一定負荷の負荷強度と息切れ、呼吸様式、動的肺過膨張との関係

Puente-Maestu L, Garci'a de Pedro J, Marti'nez-Abad Y, Rui'z de On~a JM, Llorente D, Cubillo JM.: Dyspnea, ventilatory pattern, and changes in dynamic hyperinflation related to the intensity of constant work rate exercise in COPD.Chest. 2005;Vol128,No2(651-656)

PubMed PMID:16100150

  • No.1012-1
  • 執筆担当:
    甲南女子大学
    看護リハビリテーション学部
    理学療法学科
  • 掲載:2010年11月18日

【論文の概要】

背景

COPD患者では、息切れによりADL、QOLが障害される。そのため、COPD患者の息切れがどのような要因で生じるのかを理解することはこれら患者に運動療法や患者指導を行う上で重要である。COPD患者の息切れの要因に関する研究では漸増負荷中の検討が多く行われている。しかし、一定負荷、更に高強度での一定負荷に関する検討は少ない。多くのADLでは負荷が漸増するものは少なく、ある程度一定負荷の動作が多い。そのため、一定負荷時の息切れの要因について検討することは重要である。

目的

COPD患者における高強度一定負荷運動中の終末呼気肺気量位(EELV)と終末吸気肺気量位(EILV)の変化と息切れとの関係を検討することである。

対象

対象はCOPD患者27名(平均年齢65±5歳、%FEV1 43±8%)。

方法

肺気量分画を測定した後に運動負荷試験を行った。まず、自転車エルゴメ-タ-用いたランプ負荷にてVO2maxを測定した。その結果から4段階(VO2maxの65%、75%、85%、95%)の運動負荷をそれぞれ自覚的最大運動強度まで行った。

結果

負荷中の息切れの反応は、漸増負荷と一定負荷では異なった反応をし、負荷強度とある程度関係していた。負荷終了時の息切れは、呼吸数、一回換気量、 EILV、EELVなどの多くの換気指標と関係が認められた。その中でも、重回帰分析の結果、EELV/全肺気量、最大吸気流量、下肢疲労感が重要な要因であることがわかった。高負荷になると、一回換気量が減少し呼吸数に依存した換気様式となった。一回換気量の減少はEELVの増加が原因と考えられた。

考察

COPDの高強度一定負荷運動では、運動開始後直ちにつよい息切れが見られる。これは呼吸様式、特に呼吸数の増加と動的肺過膨張(EELVが安静時以上に上昇する現象)と関係していた。その理由としては、吸気・呼気流量制限による換気増加制限、気流制限の感覚などが影響していると考えられた。高負荷では EELV上昇による換気制限が主要な運動制限因子の一つと考えられる。

【解説】

COPD患者の息切れの原因としては、本論文でも中心的に述べられている動的肺過膨張をはじめ、呼吸筋の機能異常と疲労、 換気効率の低下、心循環系の機能障害、心理的要素、骨格筋の機能異常などが報告[1.-3.]されている。
本論文では、COPD患者の高負荷一定強度時の換気様式と息切れの関係を検討している。このような負荷形態は、COPD患者のADL中にも見られるものであり、その息切れは動的肺過膨張やそれに伴う換気様式の変化が大きく影響することが述べられている。
この内容は、COPD患者に対する運動療法やADL時の患者指導を行う上で非常に有用である。

【参考文献】

  1. Dolmage, TE, Goldstein, RS,Repeatability of inspiratory capacity during incremental exercise in patients with severe COPD. Chest 2002;121,708-714
  2. Rodrigues F.,Limiting factors of exercise capacity in patients with COPD,Rev Port Pneumol. 2004 ;10(1):9-61.
  3. O'Donnell DE. Hyperinflation, dyspnea, and exercise intolerance in chronic obstructive pulmonary disease.Proc Am Thorac Soc. 2006;3(2):180-4.

2010年11月18日掲載

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