慢性腰痛症患者に対するモーターコントロールエクササイズ、スリングエクササイズ、一般的エクササイズ:1年間のフォローアップ無作為化対照試験

Monica Unsgaard-Tøndel, Anne Margrethe Fladmark, Øyvind Salvesen, Ottar Vasseljen:Motor Control Exercises, Sling Exercises, and General Exercises for Patients With Chronic Low Back Pain: A Randomized Controlled Trial With 1-Year Follow-up.Physical Therapy, 2010; 90: 1426-1440.

PubMed PMID:20671099

  • No.1101-1
  • 執筆担当:
    甲南女子大学
    看護リハビリテーション学部
    理学療法学科
  • 掲載:2010年12月11日

【論文の概要】

背景

非特異的慢性腰痛症患者にエクササイズは有効である。しかしながら、最も効果的なエクササイズは判明していない。

目的

この研究は慢性腰痛に対するモーターコントロールエクササイズ、スリングエクササイズ、一般的エクササイズの効果を比較した。

方法

研究デザイン:
1年間のフォローアップ無作為化対照試験

設定:
この研究はノルウェーのプライマリーケアで実施した。

対象:
非特異的慢性腰痛症患者で、19歳から60歳の109名を対象とした。少なくとも3ヶ月間、腰痛が持続しており、Numeric Pain Rating Scale (NPRS) で2から10の者とした。

介入:
この研究の介入は低負荷モーターコントロールエクササイズ、高負荷スリングエクササイズ、一般的エクササイズである。これらは熟練した理学療法士により1週間に1回、8週間実施された。

測定:
介入前、8週間の介入後および1年後にNPRSで疼痛を測定した。そして、介入前後に活動制限を Oswestry Disability Index、体幹の柔軟性を指床間距離、不安-回避思考をFear-Avoidance Beliefs Questionnaire で測定した。

結果

介入後の評価ではグループ間で疼痛、他の評価で有意な差はなかった。介入後、1年後の疼痛軽減度のグループ間平均値の差(信頼区間95%)は、スリングエクササイズに比べモーターコントロールエクササイズは0.3(-0.7から1.3)と0.4(-0.7から1.4)、一般的エクササイズに比べスリングエクササイズは0.7(-0.6から2.0)と0.3(-0.8から1.4)、一般的エクササイズに比べモーターコントロールエクササイズは 1.0(-0.1から2.0)と0.7(-0.3から1.7)であった。

考察

この研究では慢性腰痛患者でモーターコントロールエクササイズ、スリングエクササイズの個々に合わせられた8つの治療が、一般的エクササイズより有効であるという根拠は得られなかった。
しかし、グループ間の疼痛軽減度からみると、モーターコントロールエクササイズは一般的エクササイズに比べ効果的であることを否定できない。

【解説】

非特異的腰痛症は公衆衛生上大きな問題であり、生涯における有病率は60%から85%と報告されている[1.]。その治療法として各エクササイズの有効性が報告されている[2.3.]。しかし、どのエクササイズが最も有効であるかという根拠はない[4.5.6.]。
理学療法では非特異的腰痛症を対象とすることは多く、効果的な治療法を検討する必要性がある。結果的にはこれらのエクササイズの効果に有意な差は認められなかったが、モーターコントロールエクササイズの有効性が示唆されている。
モーターコントロールエクササイズは、腹部筋群の筋収縮を超音波イメージによりモニターでフィードバックしており[7.]、深部筋群の収縮を効率的に促すことができる治療法である。

【参考文献】

  1. World Health Organization. The burden of musculoskeletal conditions at the start of the new millennium. 2003. Available at: http://whqlibdoc.who.int/trs/WHO_TRS_919.pdf. Accessed November 2, 2004.
  2. Airaksinen O, Brox JI, Cedraschi C, et al. Chapter 4; European guidelines for the management of chronic nonspecific low back pain. Eur Spine J. 2006; 15(suppl 2): S192-S300.
  3. van Middelkoop M, Rubinstein SM, Verhagen AP, et al. Exercise therapy for chronic nonspecific low-back pain. Best Pract Res Clin Rheumatol. 2010;24:193-204.
  4. Macedo LG, Maher CG, Latimer J, McAuley JH. Motor control exercise for persistent nonspecific low back pain: a systematic review. Phys Ther, 2009;89:9-25.
  5. Rackwits B, de Bie R, Limm H, et al. Segmental stabilizing exercise and low back pain, what is the evidence: a systematic review of randomized controlled trials. Clin Rehabil. 2006;20:553-567.
  6. Standaert CJ, Weinstein SM, Rumpeltes J. Evidence-informed management of chronic low back pain with lumber stabilization exercise. Spine J. 2008;8:114-120.
  7. Teyhen DS, Childs JD, Flynn TW. Rehabilitative ultrasound imaging: When is a picture necessary? J Orthop Sports Phys Ther. 2007;37:579-580.

2010年12月11日掲載

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