MRIおよびKT-1000で左右差3mm以上が確認されたACL損傷者211名のうち、13歳から60歳の複合靱帯損傷のない片側のACL単独損傷(軽度の半月板損傷の合併は含める)者で、週2回以上5週間の来院が可能な者100名が、受傷後3カ月以内で5週間の漸進的運動療法プログラムに参加した。
ACL損傷後の早期リハビリテーションプロトコールは3段階に分かれており、第1段階は局所の腫脹と膝ROMの改善を目的とし、3カ月以内に改善しなければ対象から除外した。第2段階は本研究の課題である筋力と神経筋反応の改善を目的としている。この段階では、アメリカスポーツ医学会ACSMが提唱するガイドラインに沿って段階的漸増的に実施する筋力トレーニングとプライオメトリックトレーニング、神経筋反応トレーニングとして種々のバランストレーニングとデラウエア大学のガイドラインに沿った動揺トレーニングを実施した。
第2段階のプログラムの参加前と終了後に膝機能を評価した。評価項目は、大腿四頭筋力とハムストリングスの等速性筋力テスト(Biodex6000を使用)、4種類の片脚跳躍テスト(片脚幅跳び、片脚クロスオーバ3段跳び、片脚三段跳び、6m片脚跳び)、2種類の自己評価質問紙(膝成績調査の日常生活動作スケールKOS-ADLSと国際膝表記委員会の自覚的膝評価IKDC2000)、包括的膝機能段階質問紙(VAS)である。
混合モデルの2元配置分散分析を用いて、筋力テストと片脚跳躍テストにおける患側と健側との対称性指標の変化や質問紙点数の変化についてプログラム参加前と完遂後との間で比較した。また、筋力テストと片脚跳躍テストの標準化された変化量の平均値が患側・健側それぞれのプログラム参加前後において算出し、比較した。
5週間のプログラム中に起きた不利な出来事(腫脹や疼痛などの出現)を記録した。