キネシオテープ(KT)とは、伸縮性テープを皮膚に貼付することで体液の循環を改善させ、自然治癒力を高める効果が期待されるテーピング法である[4]。KTの効果として、筋機能の改善、体液の循環改善、疼痛抑制などが述べられており[4]、このような効果を背景として、スポーツ外傷へどのような影響を及ぼすのかという研究が近年報告されている[5]。
KTのパフォーマンスに及ぼす影響を評価する方法としては、等速性筋力やジャンプパフォーマンスなどを用いている報告が多い[5, 6, 7]。大腿四頭筋へのKT貼付の効果について、等速性筋力による評価を用いた先行研究では、求心性膝伸展筋力よりも遠心性膝伸展筋力の方が筋力が向上すると報告しているものが多く[5, 6, 7]、ジャンプパフォーマンスにより評価した先行研究では、KT貼付により片脚幅跳びの距離が向上したと報告されている[6]。これらのことから、大腿四頭筋へのKT貼付は、筋に対して高負荷の連続となるスポーツ場面にて、パフォーマンスの向上につながる可能性が考えられる。
さらに、本研究では内側広筋(VM)へKT貼付した際の、ピークトルク到達時間という新たな筋パフォーマンスに着目しており、筋活動の遅延が因子となる膝蓋大腿部痛症候群などの筋骨格系障害の予防やリハビリテーションに関連して、KT貼付によりピークトルクの早期発生を促す可能性を示した点でも有益な報告といえる。
しかし、本研究では筋力測定を膝関節の等速性求心性運動のみ実施している。実際のスポーツ場面では、求心性の筋収縮のみならず遠心性収縮を繰り返すため、KTの筋パフォーマンスへの影響をさらに詳細に検討し、障害の予防やスポーツ場面におけるKTの使用の有用性へとつなげるためには、遠心性収縮における、ピークトルク到達時間などの筋パフォーマンスも検討する必要があると考える。また、本研究では、対象者を男女混合としているが、女性はホルモン周期なども筋機能に関係してくるため、男女別の結果を示したり、運動経験を統一し、個々人のKT非貼付時の筋力のばらつきを小さくすることなど、臨床場面やスポーツ場面という目的に合致した対象を選択することできれば、より有益な報告になると思われる。