本レビューはOAの危険因子が何であるのかを特定するために行われたものである。結果、関節損傷(の既往)、肥満、職業活動が膝・股OAのリスクを増加させる危険因子として示された。
OAは本邦でも患者数の多い疾患である。OAの疫学調査をみると、股OAを対象に行ったものは少なく、本邦における有病率は1.0-2.4%であると報告されている1),2)。また、膝OAを対象に行ったものでは、Yoshimuraら3)によるものがあり、本邦のX線で診断される有病者数(40歳以上)は、2530万人(男性860万人、女性1670万人)と報告されている。また、Muraki4)はX線上変化を認めるOA潜在患者のうち、男性で1/4、女性で1/3が痛みを伴うと報告しており、この結果から有症状有病者数は約800万人であると推定されている。足OAについての本邦での疫学調査については渉猟した限り見当たらなかった。
以上の報告からもわかるように、潜在的なOA(特に膝OA)を含めた有病者数は非常に多く、OAの予防・マネージメントは非常に重要なテーマである。OAを予防・マネージメントするためには、本レビューで示されたような、関節損傷の既往、肥満、仕事の内容といったものに注意をする必要がある。つまり、我々理学療法士の持つ役割としては、関節損傷(ACL損傷や半月板損傷)を予防し、肥満に対する警笛を鳴らし、仕事時の動作について負担のかかりにくい動作の指導を行うといったことである。関節損傷の予防については多くの論文が存在し、様々な報告がされているので参照していただきたい。仕事時に気を付けるべき動作としては、本レビューで報告されているものの他に、Murakiら5)による報告がある。具体的には、1日あたり2時間以上立つ(OR=1.97)、3キロ以上歩く(OR=1.80)、1時間以上坂道を上る(OR=2.24)、週一回以上10キロ以上のものを持ち上げる(OR=1.90)などがリスクを増加させる仕事内容であり、逆に座ることの多い仕事ではリスクが低いと報告されている(OR=0.73)。
これらの予防・マネージメントには根拠に基づいた指導が不可欠であり、本レビューも参考にしながら具体的な数値をもって取り組んでいくべきである。また、足OAに関連した危険因子を調べた研究は少ないため、今後さらなる検討が必要となるであろう。