対象は,インピンジメント症候群を呈し,大学病院に通院する46症例とした。取り込み基準は,18-65歳で12週以上継続する片側の肩関節痛を呈する者とした。また,3つの整形外科的テスト(有痛弧サイン,棘下筋テスト,Howkins-Kennedyサイン)がすべて陽性の者とした。なお,肩鎖関節や関節唇に問題のある症例は除外した。対象者をホームエクササイズ群と,セラピスト管理下の運動療法群に23名ずつ振り分けた。
両群ともに,肩関節の正常な運動を再構築し,日常生活活動に般化することを目的に,先行研究の治療原則に基づいて介入を行った。ホームエクササイズ群は,初回のみセラピストの管理下で運動療法を実施し,その後6週間のホームエクササイズを実施した。管理下の運動療法群は,6週間のホームエクササイズに加え,10回のセラピスト管理下の運動療法を実施した。また,各症例の症状に応じて,26週間までの治療の継続を,対象者に選択させた。
エクササイズの内容は両群で共通とし,肩甲骨の安定化エクササイズ,ローテーターカフトレーニング,疼痛の無い範囲での関節可動域運動を実施し,各症例の状況に応じて選択した。負荷を与える際は,弱いラバーバンドを利用し,できるだけ疼痛を誘発しない可動範囲のみとした。ホームエクササイズでは,4 - 6個の運動を30回3セットとし,1日に2回実施した。また,症例の状況に応じて,筋のストレッチを追加した。ホームエクササイズは,症状の変化に応じて適切なものに変更した。対象者にはホームエクササイズを記載した紙面を渡し,実施状況を記録させた。
一次アウトカム評価は,Shoulder Pain and Disability Index (SPADI)とし,二次アウトカム評価は,疼痛(Numeric Rating Scale, NRS),Fear Avoidance Beliefs Questionnaire (FABQ),自動関節可動域,就労状況,治療の満足度,整形外科的テストとした。疼痛の評価は毎週実施し,その他の評価は介入開始前と6週後に評価した。また,SPADI については26週後にも評価した。
SPADIの臨床的に意義のある最小変化量は20点と報告されている。本研究は,群間のSPADIの差が20点で有意確率を0.05とした際に,検出力が0.8を超えるようにデザインした。時間をランダム係数とした線形混合効果モデルを用いて分析した。なお疼痛とSPADIについては年齢と性別の影響を除去し,その他の指標については年齢と性別と開始時の疼痛の影響を補正した。。