病院退院後30日間におけるアウトカムとフレイルとの関係

Kahlon S, Pederson J, Majumdar SR, Belga S, Lau D, Fradette M, Boyko D, Bakal JA, Johnston C, Padwal RS, McAlister FA.Association between frailty and 30-day outcomes after discharge from hospital.CMAJ, August 11, 2015, 187(11)

PubMed PMID:26009583

  • No.1601-2
  • 執筆担当:
    畿央大学健康科学部
    理学療法学科
  • 掲載:2016年1月4日

【論文の概要】

背景と目的

 退院後の再入院は多く、これは費用面からも問題であるが、再入院リスクの高い患者を同定する予測モデルは不十分である。このことは現在認識されていない大きな要因が存在することを示唆している。我々は一般内科病棟から退院して30日以内の再入院もしくは死亡へのフレイルの影響を調査した。フレイルはよく過小診断されており、入院患者の27%から80%、地域高齢者の4%から59%と評価方法により有病率に大きな差がある。

方法

 本研究は前向きコホート研究である。エドモントンにある2医大付属病院の一般内科7病棟から退院した18歳以上の患者を対象とした。フレイルは有効性が確証されているClinical Frailty Scaleの平均値によって定義した。このアセスメントツールは臨床判断に基づき良好に確証されており、フレイルを1(非常に健康)から9(致命的な病気)で数値化するものである。我々はClinical Frailty Scaleが5点以上(軽度、中等度、重度、非常に重度を表し、先行研究におけるカットオフ値)をフレイルとみなした。主要アウトカムは退院後30日以内の死亡または再入院の複合とした。軽度フレイルは(5点)は1つ以上の手段的ADL(買い物、家事、食事の支度など)困難に相当し、中等度フレイル(6点)は1つまたは2つのADL(入浴、更衣、階段昇降など)困難に相当する。重度フレイル(7点か8点)は原因が身体的か認知的かに関わらず、3つ以上のADLが全介助状態に相当する。
二次アウトカムには主要アウトカムの各要素、30日以内の救急外来への来院頻度とした。

結果

 研究期間に退院した1147患者のうち495患者が本研究に登録された。平均年齢は64歳であり、252人(50.6%)が女性であった。大多数(97.4%)が救急外来からの入院であり、合併症の中央値は5つであった。上位5つの入院理由は心不全(n=50)、肺炎(n=50)、慢性閉塞性肺疾患(COPD、 n=38)、尿路感染(n=27)、糖尿病の急性合併症(n=26)であった。また163患者(32.7%)が糖尿病を有していた。
495患者のうち162(32.7%)がフレイルと見なされた(Clinical Frailty Scale ≥ 5)。非フレイルの患者と比較してフレイル患者は高齢で女性に多く、多くの合併症を有しており、過去一年の入院が多く、EuroQol Health Questionnaire(QOL評価)の得点が低く、歩行速度(timed up and go testにて判定)が遅い、退院時のLACEスコアが高かった。
全体で、85患者が退院後30日以内に再入院もしくは死亡し、最も多い原因はうっ血性心不全(n=11)、肺炎(n=8)、COPD(n=6)、悪性疾患(n=5)、腎不全(n=4)であった。非フレイル患者に比較してフレイル患者は30日以内の死亡もしくは再入院が多かった(39[24.1%] v. 46[13.8%]。フレイルに年齢や性別、LACEスコアを含む付加的な情報を加えた予測モデルでは、中等度から重度のフレイルのみが独立した再入院もしくは死亡の危険因子となった(調整済みオッズ比 2.19、95%信頼区間 1.12-4.24)。

考察

 フレイルは一般的であり内科病棟退院後の早期再入院や死亡と大きく関連する。Clinical Frailty Scaleは一般内科病棟から退院するハイリスク患者を同定するのに有用な可能性がある。

まとめ

 Clinical Frailty Scaleを用いて定義したフレイルは内科病棟退院後30日以内の再入院や死亡を予測する独立した因子となった。しかしながら、付加的な予後情報を加えると、リスク予測は不完全であった。退院後の早期再入院や死亡についての付加的な予測因子を明確にするためには、さらなる研究が必要である。

【解説】

 医療保険制度の改正に伴い、今後さらに本邦における在院日数は短縮されていく見込みである。退院後早期の状態悪化や再入院は早期退院を推し進める上で、その危険性も高まることが考えられる。本研究からは3つの鍵となる所見が提示されている。一つは内科病棟退院後の患者においてはフレイルな状態にあることが多いという事。二つ目はフレイルの存在が年齢・性別を調整しても退院後30日以内の再入院や死亡リスクの増加、医療機関利用の増加に関連していたという事。三つ目は中等度から重度フレイルの存在に関しては予後的情報を付加することで、再入院や予測率が高くなることである。

2016年01月04日掲載

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