脳卒中後の上肢運動障害に対する在宅CI療法の効果

Barzel A, Ketels G, Stark A, Tetzlaff B, Daubmann A, Wegscheider K, van den Bussche H, Scherer M. Home-based constraint-induced movement therapy for patients with upper limb dysfunction after stroke (HOMECIMT): a cluster-randomised, controlled trial. Lancet Neurol. 2015 Sep;14(9):893-902.

PubMed PMID:26231624

  • No.1604-1
  • 執筆担当:
    畿央大学健康科学部
    理学療法学科
  • 掲載:2016年4月1日

【論文の概要】

背景

 脳卒中後の上肢運動障害に対するCI療法の効果は、多くの臨床研究で検証されており、推奨される上肢運動障害の治療方法のひとつである。しかしながら、在宅でのリハビリテーションでCI療法の効果は明らかにされていない。

目的

 研究の目的は、自宅環境内での日常生活で上肢使用をトレーニングする在宅CI療法の効果を検証することである。

方法

 北ドイツ内の71の治療施設を選択し、4週間の在宅CI療法を実施する37施設、4週間の標準的治療を実施する34施設にランダム化した。取り込み基準は、脳卒中発症後6ヶ月以上の患者で軽度から中等度の上肢運動障害を有しており、非専門的コーチとして参加できる友人や家族を持つ者とした。両群の患者は、4週間の介入期間で専門的なセラピストと5時間のコンタクトをもった。在宅CI療法群では、セラピストが患者の友人や家族そして患者自身にCI療法の指導を行い、在宅での練習は家族をコーチとして実施した。標準的治療群では、伝統的な理学療法や作業療法を実施し、在宅での追加練習は含めなかった。全ての評価は、盲検化した評価者がベースライン、介入4週後、6ヶ月後に渡って実施した。主要アウトカムは、Motor Activity LogのQuality of Movement(MAL-QOM)、Wolf Motor Function Testのパフォーマンス時間(WMFT-PT)とした。

結果

 2011年7月11から2013年6月4日の期間で登録された156名の患者を在宅CI療法群85名、標準的治療群71名に割り付けた。4週間の介入を完遂できた患者は、在宅CI療法群82名(96%)、標準的治療群71名(100%)であった。4週間のMAL-QOMの変化量は、在宅CI療法群で0。56、標準的治療群で0。31であり、在宅CI療法群の患者は標準的治療群よりも有意に大きなMAL-QOMの改善を示した。WMFTのパフォーマンス時間の変化量は、在宅CI療法群で–25。60%、標準的治療群で–27。52%であり、両群の変化量には有意差を認めなかった。有害事象は、在宅CI療法群で9件、標準的治療群で10件認めたが、研究介入に関連するものではなかった。

考察

  在宅CI療法は、標準的治療よりも、より効果的にADL上での麻痺側上肢の使用を向上させた。しかし、上肢運動機能に関しては、標準的治療も、在宅CI療法でも差はなかった。在宅CI療法が、臨床的に意味のある改善を導くかどうかを検証するために、今後もさらに研究が必要である。

まとめ

 家族参加型の在宅CI療法は、麻痺側上肢の日常生活内での使用をより効果的に導くことが出来るが、上肢運動機能の改善に関しては十分ではない。

【解説】

 CI療法は、脳卒中後の上肢運動障害に対するエビデンスレベルの高い治療であり、その報告1)は多数なされている。本研究では、患者の家族や友人をコーチとした在宅におけるCI療法の効果を検証したものである。CI療法は、麻痺肢の積極的な使用のみならず、適切な課題設定と難易度調整、フィードバックなどからプログラム2)が構成されている。在宅で非専門家である家族や友人が、これらを適切に管理し、十分に実践できたかは疑問が残るが、ADL上での上肢の効果的使用には変化があったことから、在宅CI療法は在宅期リハビリテーションにおいても実践可能な方法であると思われる。しかし、そのためには、入院中からCI療法を患者が経験し、家族や友人がその指導を受けることが重要であると思われる。チーム医療の実践、回復期から在宅期への連携をいかにして有機的に行うかが大切なポイントになると考える。

【参考文献】

  1. Corbetta D, Sirtori V, Castellini G, Moja L, Gatti R. Constraint-induced movement therapy for upper extremities in people with stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2015 Oct 8;10:CD004433.
  2. Kwakkel G, Veerbeek JM, van Wegen EE, Wolf SL. Constraint-induced movement therapy after stroke. Lancet Neurol 14(2): 224-234, 2015

2016年04月01日掲載

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