女子児童から閉経後女性までの女性全体を対象とした運動の骨への効果:システマティックレビューとメタアナリシスの要約

Xu J, Lombardi G, Jiao W, Banfi G.Effects of Exercise on Bone Status in Female Subjects, from Young Girls to Postmenopausal Women: An Overview of Systematic Reviews and Meta-Analyses. Sports Med. 2016 Feb 8. [Epub ahead of print]

PubMed PMID:26856338

  • No.1607-2
  • 執筆担当:
    畿央大学健康科学部理学療法学科
  • 掲載:2016年7月1日

【論文の概要】

背景

 骨粗鬆症や閉経後の骨量減少は世界中で大規模な社会的及び経済的負担を招いている。定期的な運動や身体活動はより高い最大骨量(PBM:peak bone mass)を獲得し、PBMの維持や老年期の骨量減少を予防する効果的な介入である。しかしながら、ほとんどの推奨は一般人を対象としたものであり、女児や女性といった骨粗鬆症へと発展する危険性が最も高い人々への特定の指針が不足している。
 

目的

 このシステマティックレビューとメタアナリシスの目的は運動や身体活動による介入が骨に与える効果の現時点におけるエビデンスを要約すること、および骨密度や骨強度を維持、改善するための運動プログラムにはどのようなものが存在するかを調査することである。
 

方法

 2009年1月から2015年6月22日までにPubMed、EMBASE、PEDro、Cochrane Libraryのデータベースを検索した。検索には以下の検索語を使用した:(ⅰ)「身体活動(physical activity)」「運動(exercise)」;(ⅱ)「骨(bone)」「骨の健康(bone health)」「骨強度(bone strength)」「骨構造(bone structure)」「骨代謝(bone metabolism)」「骨代謝回転(bone turnover)」「骨生体指標(bone biomarkers)」。検索対象は女性を対象としたシステマティックレビューもしくはメタアナリシスのうち英語で出版されたものに限定した。最終的な解析は基準を満たした12本の論文を対象に行った。
 

結果

 インパクトエクササイズを組み合わせた運動プロトコル(インパクトトレーニングをレジスタンストレーニングと共に実施する)が閉経前後の女性の骨塩量を最も維持・改善する効果があった。女児のPBMの獲得には学校における短時間の反動を利用したハイ・インパクトの運動プログラムが効果的であった。全身振動刺激トレーニングは閉経後女性や高齢女性の骨に対して有益な効果は認められなかった。
 

まとめ

 それぞれの年齢に適した運動を生涯にわたって行うことは,女性にとって骨の健康を維持していく上で効果的な方法である。
 

【解説】

 骨粗鬆症は骨の脆弱性が増大し、骨折リスクが上昇する疾患である。思春期~成熟期の女性では女性ホルモンの一種であるエストロゲンが骨吸収を抑制し骨形成を促進しているため骨量は維持されるが、閉経により卵巣機能が低下するとエストロゲン濃度は急激に減少する。女性が骨粗鬆症を予防するには思春期にできるだけ高いPBMを獲得すること、閉経後の骨量減少をできる限り緩やかにすることが大切である。本研究ではより高いPBMの獲得やPBMの維持・改善にはどのような運動プロトコルが効果的なのかを各年代ごとに検討している。中高生の年代では学校における短時間(10~20分)のプライオメトリックストレーニング(跳躍、縄跳び、器械体操、球技など)がより高い最大骨量の獲得に有効とされている。また、成熟期の女性ではハイ・インパクトトレーニング(垂直跳び、縄跳びなど)、更年期及び老年期の女性ではインパクトトレーニング(垂直跳びや縄跳びなどの強度の高いもの~エアロビクスやウォーキング、段差昇降などの強度の低いもの)とレジスタンストレーニングを組み合わせた複合的なプログラムが推奨されている。
 本邦における要介護となる原因の約11%が骨折・転倒によるものであり、骨折をきたすと機能低下への影響は大きいが、骨折がなくとも骨粗鬆症患者のQOLは低下すると報告されており1)、骨粗鬆症の予防は重要である。閉経後の女性を対象とした研究ではあるが、高強度の全身運動(ジョギングやジャンプ)は大腿骨近位部、低強度の全身運動(ウォーキングや太極拳)は腰椎の骨密度にそれぞれ効果があるとの報告もあり2)、対象者の年代や重点的にアプローチしたい部位を考慮することでより効果的な運動プログラムを提供できると考えられる。
 

【参考文献】

  1. Wilson S, et al: Health-related quality of life in patients in the absence of vertebral fracture: a systematic review. Osteoporos Int. 23(12): 2749-2768, 2012.
  2. Howe TE, et al: Exercise for preventing and treating osteoporosis in postmenopausal women. Cocrane Database of Syst Rev. 7: CD000333, 2011.

2016年07月01日掲載

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