脳性麻痺児では二次障害として股関節脱臼や亜脱臼が好発し、粗大運動機能が重度であればあるほど、股関節脱臼の発生率は高くなるといわれている1,2)。股関節脱臼は痛みを伴わずに徐々に進行することで発見が遅れ、将来的な股関節の関節拘縮や疼痛の出現、不良姿勢へとつながることによる側弯の増悪などが問題とされている。股関節脱臼に対する治療としては整形外科的手術があり、対象の脱臼の状態や運動機能などを考慮して筋解離術、腱移行術、観血整復術、骨切り術などが行われている。股関節観血整復術を行う症例は、股関節脱臼がかなり進行している者であり、筋解離だけでは脱臼の改善が見込めない場合が多い。その場合でも、今の日本では第一手術として股関節観血整復術を選択することはなく、事前に股関節筋解離術を行い、股関節周囲の過緊張状態を軽減しておくことが重要と考えられている。筋解離術は日本と海外では術式が大きく異なり、海外に比べて日本では複数の筋を様々な延長方法で調整することがある3)。また、股関節脱臼が重度である場合は、筋解離術や観血整復術のみで整復することは困難であり、観血整復術と同時に大腿骨減捻内反骨切り術を行うことも多い。
理学療法を行う際には股関節脱臼の状態を考慮して関節可動域練習を行ったり、股関節脱臼の状況や粗大運動レベルが臼蓋の状況に与える影響などを知っておくなど4)、将来的な展望を持っておくことが重要である。本研究で述べられているとおり、脳性麻痺患者に対する整形外科手術後の状態変化に関しては、エビデンスレベルの高い研究はされていない。理学療法の分野では術前後の機能変化や参加・活動レベルの変化なども含めて、今後の発展が期待されている。