介入後フォローアップの新戦略-居宅訪問と電話連絡によるCOPDに対する呼吸リハ効果の持続について-

Li Y, Feng J, Li Y, Jia W, Qian H: A new pulmonary rehabilitation maintenance strategy through home-visiting and phone contact in COPD. Patient Prefer Adherence. 2018 Jan ;12:97-104

PubMed PMID:29391781

  • No.1904-01
  • 執筆担当:
    東京工科大学医療保健学部理学療法学科
    吉松 竜貴
  • 掲載:2019年4月1日

【論文の概要】

 COPD患者に対する呼吸リハの効果は、介入後の時間経過とともに失われていく。そこで、172例の安定したCOPD患者を対象として、居宅訪問と電話連絡を含む介入後の新たなフォローアップ戦略(PRMG群:pulmonary rehabilitation maintenance group)が、通常のケア(UC群:usual care group)と比べて介入効果をどれだけ持続し得るか調査した。8週間の介入後、対象は無作為に2群に割り付けられ、その後の経過を3か月毎に評価された。アウトカムは6分間歩行距離(6MWT: The 6-minute walking test)、COPDアセスメントテスト(CAT:COPD assessment test)、改訂版MRC息切れスケール(mMRC:modified Medical Research Council scale)とした。PRMG群では6MWT、CAT、およびmMRCの介入効果が維持されたが、UC群の介入効果は介入後徐々に減少した。また、PRMG群は急性増悪発生頻度が少なかった。以上のことから、居宅訪問と電話連絡を含む呼吸リハのフォローアップ戦略は、効果継続面で通常のケアよりも優れており、COPDの急性増悪発生率を低下させることにも寄与することが示唆された。

【解説】

 呼吸リハビリテーションのステートメントには、COPDに対する活動的な生活への行動変容を目指したセルフマネジメント教育の重要性が述べられている。セルフマネジメント教育によって行動変容を成し遂げることがCOPDの呼吸リハビリテーションにおける理想のゴールであると解釈されるが、一方で、行動変容を成し得るための最適な介入手法は確立されていない。
 こうした矛盾はCOPDに限ったものではない。維持期(生活期)のリハビリテーションをいつ・どの段階で終了するかは訪問リハビリテーションの命題である。進行性疾患に罹患していなくとも、専門家による永続的なモニタリングを望む患者は少なくない。本研究は、そうしたリハビリテーションの終了とその後のフォローアップに関する問題に対するひとつの回答であると考える。
 近年、在宅医療の分野において、ICT(Information and Communication Technology)を活用した遠隔介入が積極的に検討されているが、エビデンスはいまだ確立されていない。本研究のフォローアップに電話連絡(遠隔介入)が含まれていることは、これを支持する結果でもあると考えられる。
 リハビリテーション専門職によるセルフマネジメント教育単体に保険算定は認められていない。本研究のように、セルフマネジメント教育のポジティブな効果について、本邦からも積極的な発信が行われることが望まれる。

【引用・参考文献】

 
  1. 植木純, 高橋仁美, 北川知佳, 他: 呼吸リハビリテーションに関するステートメント:日本呼吸ケア・リハビリテーション学会,日本呼吸理学療法学会,日本呼吸器学会. 日呼ケアリハ学誌. 2018;27(2):95-114 

2019年04月01日掲載

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