介助者を含めたassistive technology(AT)の介入効果:無作為化対照試験

Mortenson WB, Demers L, et al: Effects of a caregiver-inclusive assistive technology intervention: a randomized controlled trial BMC Geriatrics 18: 97 2018

PubMed PMID:29669536

  • No.1911-03
  • 執筆担当:
    東京工科大学医療保健学部理学療法学科
    宮﨑 貴朗
  • 掲載:2019年11月1日

【論文の概要】

 福祉機器を使用している要介護者と介助者を対象とし、機器の使用方法、介助法などの指導によるADLやIADLへの介入効果を検討するため、要介護高齢者の機能改善および家族介護者の介護負担軽減などを評価した。一重盲検法、混合研究法、無作為化対照試験により、介入開始時、6週、22週、58週後の結果について前向き研究を行った。要介護者と家族介護者のペアを一組の対象とし、介入群(N=44)、対照群(N=46)の二群に無作為に分け、要介護者が55歳以上、移動や生活動作に制限がある、家族介護者の介助が週4時間以上であることを包含条件とし、要介護者と介助者のADLとIADLはSMAF(Functional Autonomy Measurement System)、SR-FIM(Self-Reported Functional Independence Measure)、RNLI(Reintegration to Normal Living Index)などを、介助者の介護負担についてはCATOM(Caregiver Technology Outcome Measure)を測定した。介入群は、介助者に問題となるADL動作を改善するための介入を行い、両群とも介助者は参加しており、フォロー期間において評価結果に有意差はなかった。両群においてフォロー期間の経過とともに、要介護者のADLは有意に低下し(p<0.01)、介助者の動作別および全体の介護負担は有意に減少しており(p<0.01)、各時期において介入群と対照群には有意差はなかった。両群ともに同様な結果となったことは、両群おける家族が介入に参加する程度に差が見られず、両群間の介入内容にはっきりとした差がみられないためと思われた。しかし、結果からは、家族介助者とともにATを使用した介入は、両群における要介護者のADLを高め介助者の介護負担を軽減することが示唆された。

【解説】

 本論文は、Mortenson WB、Dermers Lらの研究グループによる福祉機器を使用した介入効果についてのRCT研究であり、これまでシステマティックレビュー1)、使用者である要介護者と介入の効果2)、介助者の負担感についての評価尺度の開発3)などの質的・量的研究を報告している。本論文における福祉機器ATは、車いす、電動車いす、杖、歩行器、手すり、などの移動補助具、バスシートなどの屋内ADL用機器などである4)5)。彼らによるシステマティックレビュー1)によると、先行研究では効果は認められるとの研究は多く、ATによる家族介助者への効果は認められ、介助者の介助量や情緒的負担感も軽減しているが、いずれもエビデンスの質が課題であるとされている。
 本論文における在宅において介助者を参加させた福祉機器による介入方法ATPUT(the home-based assistive technology provision, updating and tune-up)とは、以下のプロセスにより構成される。
  1. 要介護者と家族介助者と協働して問題のある動作を認識し優先順位付け
  2. 要介護者のADLと社会参加を在宅や地域で評価
  3. 介助者による支援やATを把握
  4. セラピストによる介助とATに関する変更内容を提案
  5. OTがATの提供、メンテナンス、チューンアップなどの計画について要介護者と介助者との交渉。(ATの推奨、修理や購入費用の援助、AT使用者への使用方法、トレーニング、フォローアップ訪問などの提案も含まれる。)
 このATPUTの介入効果検討の尺度として、福祉機器を使用している要介護者のADLやIADL機能と、その介助者の負担感について評価している。要介護者のADLやIADLはSMAF6)、自ら評価するSR-FIM7)、地域社会への参加度合いを評価するRNLI8)、本研究グループが開発した福祉機器使用者へ介入方法と介助者の負担感評価であるCATOM3)を使用してある。
 本論文ではATPUTによる介入をRCTにより検討し、ADLと介護負担への効果は認められたものの、介入群と対照群に効果の差はなかった。両群に有意差はなかった理由としては、対照群においても日常的に行っている介助者による介助は制限されていなかったため、両群の介入内容に明確な差がなかったことと、評価ツールの感度のためと考察されている。効果が認められた先行研究では、ATや人的介助において介入内容や量の明らかな違いのもと比較されていた。
 今後は、介助者の参加度合いのコントロールや、様々な側面ができるような評価尺度の感度などが課題となるものと考察されている。日常生活における福祉機器を使用した介助についての介入を検討し、要介護者の生活機能の改善と介助者の介護負担の軽減が示唆されており、在宅ケアを積極的に進める時代にとって有用性の高い論文である。

【引用・参考文献】

  1. Mortenson WB, Demers L, et. al.: How assistive technology use by individuals with disabilities impacts their caregivers: a systematic review of the research evidence. Am J Phys Med Rehabil 2012; 91: 984–998.
  2. Mortenson WB, Demers L, et. al.: Effects of an assistive technology intervention on older adults with disabilities and their informal caregivers. An exploratory randomized controlled trial. Am J Phys Med Rehabil. 2013; 92:297–306.
  3. Mortenson WB, Demers L, et. al. : Development and preliminary evaluation of the Caregiver Assistive Technology Outcome Measure CATOM. J Rehabil Med 2015; 47: 412–418.
  4. Agree EM.: The potential for technology to enhance independence for those aging with a disability. Disabil Health J. 2014; 7: S33–9.
  5. Freedman VA, Kasper JD, et. al.: Behavioral adaptation and late-life disability: a new spectrum for assessing public health impacts. Am J Public Health. 2014; 104: e88–94.
  6. Desrosiers J, Bravo G, et. al.: Reliability of the revised functional autonomy measurement system (SMAF) for epidemiological research. Age Ageing. 1995; 24: 402–6.
  7. Jensen MP, Abresch RT, et. al.: The reliability and validity of a self-report version of the FIM instrument in persons with neuromuscular disease and chronic pain. Arch Phys Med Rehabil. 2005; 86:116–22.
  8. Wood-Dauphinee SL, Opzoomer MA, et. al.: Assessment of global function: the reintegration to normal living index. Arch Phys Med Rehabil. 1988; 69:583–90.

2019年11月01日掲載

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