退院後の身体活動の追跡にはスマートフォンと装着型デバイスのどちらが適切か:無作為化比較試験の2次分析

Patel MS, Polsky D, Kennedy EH, Small DS, Evans CN, Rareshide CAL, Volpp KG. Smartphones vs Wearable Devices for Remotely Monitoring Physical Activity After Hospital Discharge: A Secondary Analysis of a Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2020 Feb 5;3(2):e1920677.

PubMed PMID:32031643

  • No.2010-04
  • 執筆担当:
    群馬大学大学院保健学研究科
    山上 徹也
  • 掲載:2020年10月9日

【論文の概要】

 退院後の患者の身体活動を長期間モニタリングする手法としてスマートフォン(スマホ)アプリと装着型デバイスのどちらがより適切であるか検討することを目的に研究が実施された。対象は2つの病院の歩行可能な自宅退院予定の患者500名 (46.6±13.7歳、男性180名 (32%)、女性:320名 (64%))であった。対象者は無作為にスマホ群と装着型デバイス (Withings Steel)群に割り付けられ、測定開始1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月後のモニタリング継続率と測定されたデータ量が比較された。その結果、スマホ群と装着型デバイス群の継続率は1ヵ月後 86.7% vs 81.9%、3ヵ月後77.6% vs 67.6%、6ヵ月後61.2% vs 46.5%で3ヵ月、6ヵ月後は装着型デバイス群と比較してスマホ群で継続率が有意に高かった。6ヵ月間に測定されたデータ量も装着型デバイス群58.9%と比較してスマホ群69.4%と有意に多かった。

【解説】

 身体活動は循環器疾患、糖尿病などの非感染性疾患(生活習慣病)や高齢期のフレイルの予防に有効である。そのため、様々な理学療法の場面で、対象者の身体活動を高める支援が求められる。理学療法士は対象者が主体的に活動的な生活を継続できるように行動変容を支援する1)。歩数計、活動量計、スマートウオッチといった装着型デバイスは、安価で非侵襲的に身体活動量を測定できる2)。そのため装着型デバイスを用いた身体活動量の測定は、対象者の気づきを促したり、目標設定とその達成度の確認 (セルフモニタリング)、モチベーションの維持などに有用である。また、近年スマホの普及に伴い、地域在住高齢者がスマホアプリの歩数計を活用しているのをみる場面も増えた。本研究結果では長期的なモニタリングにおいては、装着型デバイスよりスマホの継続率が高かった。今や生活の一部となっているスマホの継続率が高かったのは妥当な結果であると感じた。よって、退院支援や地域の介護予防事業の中で、対象者のスマホを用いて、やりたいこと、行きたい場所などの検索、その実行と身体活動の測定体験などを取り入れることが、その後の行動変容に有効かもしれない。一方で、装着型デバイスは脈拍など他の項目も評価できるため、対象者の状態や目的に応じて使い分けるとよいかもしれない。また理学療法士の視点で身体活動量に応じて行動変容を促したり、スモールステップで最適な運動メニューを提案するようなスマホアプリの開発など、支援ツールの開発も検討すべきかもしれない。

【引用・参考文献】

1)  古名丈人: 予防領域における理学療法士の役割, 予防理学療法学要論. 大渕修一, 浦辺幸夫 (監),
   医歯薬出版, 東京, 2017, pp.68-69.
2)  佐藤圭, 小笠原美沙, 他: 身体活動量評価の特徴と有用性. リハビリテーション科学ジャーナル.
   2017; 12: 123-133.

2020年10月09日掲載

PAGETOP