前十字靱帯再建術後の専門的スポーツ復帰トレーニング-無作為化比較試験-(研究プロトコル紹介)

Kathleen White, Stephanie L Di Stasi, Angela H Smith, Lynn Snyder-Mackler. Anterior Cruciate Ligament- Specialized Post-Operative Return-To-Sports (ACL-SPORTS) Training: A Randomized Control Trial. BMC Musculoskelet Disord. 2013 Mar 23;14:108.

PubMed PMID:23522373

  • No.2103-02
  • 執筆担当:
    順天堂大学保健医療学部理学療法学科
    相澤 純也
  • 掲載:2021年3月26日

【論文の概要】

 この研究の目的は前十字靱帯再建術後アスリートにおけるACL-SPORTSトレーニングが関節負荷、バイオメカニクス、臨床データ、機能レベルに及ぼす効果を無作為化比較試験で明らかにすることである。この論文はプロトコルと参加者募集・振り分けに関する経過報告である。対象は片側ACL単独再建術後の活動レベルが比較的高い13歳から55歳までの男女各40名であった。データ計測はトレーニング前(ベースライン)、トレーニング後・1年・2年で実施するよう計画された。対象者は40名ずつ外乱トレーニング群と標準トレーニング群に振り分けられ、両群ともトレーニングは10セッションで計画された。アウトカムは歩行中の運動力学的データ、膝伸展筋力、片脚ホップ距離、患者立脚型質問票スコア、スポーツ復帰率、再受傷率、受傷前活動レベル復帰率とされた。

【解説】

 これはアメリカのデラウェア州にあるUniversity of Delaware Physical Therapy Clinicで行われた研究であり、2年間のフォローアップによる無作為化比較試験のプロトコル(途中経過)に関する論文である。この論文が掲載されたジャーナルの2019年インパクトファクター(Journal Citation Reports)は1.879であり、2020年7月15日時点の被引用回数(Web of Science)は34回であった。
 この研究の目的は前十字靱帯再建術後アスリートにおけるACL-SPORTSトレーニングが関節負荷、バイオメカニクス、臨床データ、機能レベルに及ぼす効果を無作為化比較試験で明らかにすることである。ACL-SPORTSトレーニングとは、理学療法士の指導下での大腿四頭筋強化、アジリティ、バランス能力を高めるエクササイズで構成された再受傷予防に向けた包括的トレーニングである1-3)。
 メインアウトカムは歩行中の運動力学的データ(3次元動作解析による関節角度・モーメント・偏位、筋骨格モデルによる関節負荷量)、大腿四頭筋最大等尺性筋力、片脚ホップ距離(シングルホップ、トリプルホップ、6メートルホップ、クロスオーバーホップ)、患者立脚型質問票スコア(Knee Outcome Survey-Activities of Daily Living Score、Global Rating Scale of Perceived Knee Function、ACL-Return to Sport after Injury、IKDC 2000、Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score、Marx Activity Rating Scale)であり、2次アウトカムはスポーツ復帰率、再受傷率、受傷前活動レベル復帰率であった。
 この論文は再受傷予防に向けた包括的トレーニングの介入効果を明らかにするための無作為化比較試験のプロトコルの経過・予定に関する論文である。結果が示されていない論文ではあるが、対象の取り込み・振り分け、フォローアップ計画、介入内容、国際標準アウトカムについて詳細に記されており、同様の研究を計画する際には非常に参考になると思われる。アメリカ国立衛生研究所(NIH)より補助金を受けている質の高い大規模な研究であるため、今後公開されるだろう成果報告への読者の注目を高める手段として経過報告論文の意義は大きいと思われる。

【引用・参考文献】

1) Myer GD, Paterno MV, Ford KR, Quatman CE, Hewett TE: Rehabilitation after anterior
  ruciate ligament reconstruction: criteria-based progression through the return-to-sport
  hase. J Orthop Sports Phys Ther 2006, 36:385–402.
2) Hewett TE, Stroupe AL, Nance TA, Noyes FR: Plyometric training in female athletes:
  decreased impact forces and increased hamstring torques. Am J Sports Med
  1996, 24:765–772.
3) Heitkamp H, Horstmann T, Mayer F, Weller J, Dickhuth H: Gain in strength and muscular
  balance after balance training. Int J Sports Med 2001, 22:285–290.

2021年03月26日掲載

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