脳性麻痺児に対する任天堂Wiiバランスボードの練習が姿勢制御に及ぼす影響:システマティックレビューとメタ分析

Desirée Montoro-Cárdenas, Irene Cortés-Pérez, Noelia Zagalaz-Anula, María C Osuna-Pérez, Esteban Obrero-Gaitán, Rafael Lomas-Vega:Nintendo Wii Balance Board therapy for postural control in children with cerebral palsy: a systematic review and meta-analysis.Dev Med Child Neurol. 2021 Jun

PubMed PMID:34105150

  • No.2107_02
  • 執筆担当:
    順天堂大学保健医療学部理学療法学科
    松田 雅弘
  • 掲載:2021年7月27日

【論文の概要】

 脳性麻痺児の機能的なバランスに対する任天堂Wiiを活用した治療(NWT)の効果をシステマティックレビューで検討した。脳性麻痺児のバランス評価はPediatric Balance Scale(PBS)、Timed Get Up and Go Test(TUG)、片脚立位で行った。11件のRCTで270名の脳性麻痺患者(平均年齢10歳1ヶ月)を対象とした。PBS(機能的)は非常に質の低いエビデンスではあるが、介入なしと比較してNWTの効果が大きい(SMD 0.95、95%信頼区間[CI]0.02-1.89)。NWT単独と従来の理学療法とNWTを併用療法で中程度の質のエビデンス(SMD 0.78, 95%CI 0.20-1.35)、約30分のセッション(SMD 0.86、95%CI 0.20-1.52)となった。TUG(動的)は非常に質の低いエビデンスだが、併用療法と従来の理学療法を比較すると、効果は中程度であった(SMD 0.70、95%CI 0.12-1.29)。NWTは、脳性麻痺患者の機能的および動的バランスを改善するための有効な治療法で、30分の併用療法で、3週間以上の介入を行った場合に有効である。

【解説】

 脳性麻痺児以外にも近年、任天堂のWii Fitを利用したバランス練習の報告1)は多い。これは高齢者の報告だが転倒リスクを軽減させ、有用で費用対効果が高く、時間がかからず、自宅で行うプログラムとしても最適とされる。VRなどの様々な技術が投入され、それぞれバランスに対する介入効果が散見されるが、比較的導入しやすく効果の高いことが推察される。
 特に理学療法のなかで遊び(楽しさ)の要素を取り入れることは子どもの理学療法として、意欲を向上させるためにも重要である。システマティックレビューの比較はNWTと従来の理学療法の併用か、介入なしを比較している。介入期間や方法で差が生じており、質の低さも指摘されているが、従来の理学療法に加えてNWTを実施するエビデンスは示されている。短期的に実施するのではなく30分以上、3週間以上の介入が機能的なバランスの改善に有用となる。これらの介入期間の目安が示されたのも大変参考になる。バランスに関わる周囲の要因を理学療法で改善を求め、自宅のプログラムを含めて30分程度ゲームでバランス練習することで、注意集中を持続させて、楽しみながらバランス練習を継続できると考える。意欲的に練習に取り組める環境を整え活動のなかでバランス能力が高まり、バランス練習の工夫の1つとしてNWTの手法を取り入れることも考慮すべきだと考えられる。

【引用・参考文献】

1) Ayesha Afridi, et al. : Wii Fit for Balance Training in Elderly: A Systematic Review.
    J Coll Physicians Surg Pak. 2021; 30(5): 559-566.

2021年07月27日掲載

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