理事長挨拶

ご挨拶
 
日本循環器理学療法学会 理事長
高橋 哲也(順天堂大学保健医療学部理学療法学科)
Tetsuya Takahashi, PT, PhD, MSc, FJCC
 
このたび日本循環器理学療法学会の初代理事長に就任いたしました高橋哲也です。本学会は、前身の(公社)日本理学療法士協会の分科学会、日本心血管理学療法学会を基盤に、2021年4月に設立された学会です。循環器理学療法学に関する知識の普及、学術文化の向上に関する事業を行い、医療及び社会福祉の充実に寄与することを目的としています。
 
評価の標準化とレジストリ調査の重要性
医師の指示のもとに行われる理学療法は、国家資格を有する理学療法士によって行われますが、その内容は各理学療法士の判断に任されています。それゆえ独自の発展を遂げた側面もありますが、同じ疾患や障害を持つ患者さんが入院しても、その病院によって評価方法が異なり、治療内容も統一されていないなどの問題点が指摘されていました。また、評価方法や治療内容が統一されていないために、理学療法の効果を表す科学的エビデンスの蓄積が不十分なまま経過してきたことは否めません。
また、高齢循環器疾患患者の増加にともない、理学療法士の多くが直接的にも間接的にも循環器理学療法に関わることが多くなっています。しかし、その実態は不明で、「回復期リハビリテーションが必要な(ADLが低下している)患者はどの程度いるのか」、「普通に生活していた患者がADLが戻らないまま退院する患者の割合や特徴はどのようなものか」、「急性期病院退院時にADLが戻らない(リハビリの適応のある)患者の退院後の転倒率、再発率、再入院率、予後は」など様々な情報が不足しています。
おりしも、2021年3月には日本脳卒中学会と日本循環器学会が「脳卒中と循環器病克服 第二次5カ年計画」を発表し、回復期以降の積極的なリハビリテーションの取り組みや、回復期のあとの維持期(生活期)についてもリハビリテーションの言及があり、理学療法士への社会的な期待が高まる中で、理学療法士自身が自分たち自身のデータを持つことの意義が高まっております。そこで、日本循環器理学療法学会では、「高齢心不全患者のフレイル実態調査(フレイル心不全理学療法レジストリ)」を開始しました。全国の病院で、高齢心不全患者を担当する際の評価を統一し、フレイルの実態を把握すること、特に、ADLの専門家である理学療法士だからこそ、また、回復期の適応と需要を明らかにするためにもADLを正確に評価することなどを定めたレジストリ調査を開始しております。約100施設の参加を得て進めているレジストリ調査により、評価の標準化を進め、エビデンスの蓄積に努めてまいります。改めてまして、レジストリ調査へのご理解とご協力をお願いいたします。
 
人材育成と教育
今回新たに発足した循環器理学療法学会では、新たに16の委員会を組織しました。その中でも特に期待しているのは、SNS・ダイバーシティ推進委員会、U40委員会、そして症例検討委員会です。循環器理学療法学の発展には、性別、国籍、年齢を問わない若手臨床研究家の育成は欠かせません。若手会員の自由な発想で、次世代の循環器理学療法学をけん引していただきたいと思っています。
また、本学会では、循環器理学療法学の教育の充実、人材育成は学会活動の柱の一つと位置付けています。学術集会とは別にサテライトカンファレンスや症例検討会講習会を活発に開催します。循環器理学療法学の基本を系統立てて学びたい方、あらためて学び直したい方、専門性の高い内容や新たなトピックスを学び臨床や研究に活かしたい方など、幅広いニーズに対応できるように様々な教育プログラムを準備したいと考えております。
 
学術集会の充実と活発な議論を
循環器理学療法学会が開催する学術集会は、循環器理学療法の関わる全ての方が、自己の研究成果を公開し、その科学的妥当性をオープンな場で活発に論議する場です。循環器理学療法学の領域は心不全、虚血性心疾患、心臓血管外科、末梢血管疾患、小児循環器、不整脈、リハビリテーションなどいくつもの領域があり、そして、急性期、回復期、生活期(維持期)という病期という領域もあります。合併症・併存疾患・既往症としての循環器疾患を含めると、高齢化が進むわが国ではまさに基礎領域といってもよい分野です。患者を総合的にとらえる理学療法やリハビリテーションの原点に立ち返り、循環器を専門とする理学療法士はもちろんのこと、循環器を専門にしていない理学療法士の方や、循環器専門理学療法士を目指す若手理学療法士に研究発表の場を提供し、活発な質疑応答を通じて臨床力向上に努めると同時に、日常臨床のお役にたてる情報を発信していきたいと考えています。
 
以上、日本循環器理学療法学会では、学術集会の開催をはじめ、エビデンスの構築、評価の標準化、登録研究(レジストリ)、人材育成などを通して、法人としての社会的責務を果たすことによって、理学療法学の向上に努めてまいります。
 
会員の皆様のため、そして循環器理学療法を必要とする多くの患者さんのために、なくてはならない学会となるように努力してまいりますので、ご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。