COVID-19に関する情報(心の健康予防)1

心の健康予防班活動報告書
2020年5月27日
 
 
 
1,はじめに : 堀 寛史
 
1−1, 前提
 最初の症例は2019年11月22日に中華人民共和国湖北省武漢市で「原因不明のウイルス性肺炎」として確認された。それ以降、中国大陸に感染が拡がり、中国以外の国と地域に拡大していった。2020年2年11日に世界保健機関(WHO)は、中国武漢で発生している疾患の原因であるウイルスをCOVID-19(Coronavirus disease 2019)と命名した。
 このウイルスは2020年5月25日現在、世界中での感染者535万人以上、死者34万人以上という人類史に残る感染拡大を引き起こし、経済、政治、医療など幅広い分野で多大な影響を与えている。日本国では2020年4月7日に緊急事態宣言が発令された(のちに全国へ広がった)。日本において全国に対する緊急事態宣言(非常事態宣言)は大東亜戦争開戦の1941年12月8日以来であり、歴史的に見ても100年に一度の事態であると捉えることができる。このような未曾有の事態の中、様々な団体が感染拡大の収束を目指して広い視点から情報収集を行っている。
 日本予防理学療法学会(以下、学会)は「COVID-19に関する日本予防理学療法学会の情報収集事業」を4月18日に会員に呼びかけた。学会は情報収集の分類を7班に分け、私達24名はその中の「心の健康予防」を担当した。心の健康予防班のメンバーの居住地は様々であり、また、病院や介護福祉の臨床を中心とした理学療法士のみならず、研究所の研究員、大学の研究者、専門学校の教員など多岐にわたった。一度も顔を合わせたことのないメンバーがほとんどでお互いが何に興味を持ち、何をなし得るかがわからないまま活動を開始した。
 COVID-19の蔓延に伴い、テレワークが推奨され、その際に使用されたICT = Information and Communication Technology:情報通信技術)ツールが今回の活動に役に立った。主に使用したツールはビジネスコラボレーションハブとしてSlack、WEB会議システムとしてGoogle Meets、ドキュメントやスプレッドシートの同時編集にGoogle ドキュメントとスプレッドシートを使用した。まず、情報を効率よく収集するため(業務量を増やさないため)全体にこれらのICTツールの使用を徹底した。また、円滑な情報収集のためWEBミーティングは頻回に開き、班員のコミュニケーションを促進した。実質の活動期間は4週間であり、はじめの1週間で活動の方向性の確認、班員の割り振りを決め、残りの3週間で情報収集と報告書の作成を行った。
 
1−2,  心の健康予防の射程
 心の健康予防は広い意味では理学療法の範疇に入るが、専門的に治療・介入するわけではない。国連の機関間常設委員会(Inter-Agency Standing Committees: IASC)が発行した「新型コロナウイルス流行時のこころのケア」(Version1.5:2020年3月)ではメンタルヘルスと心理社会的支援の介入ピラミッドを提示し、それに関わる人の立ち位置について説明している。その中で「専門家によるサービス」が頂点に有り、その下に「焦点を絞った非専門家によるサービス」がある。理学療法士は後者に当たるため、あくまでも非専門家の立ち位置からの情報収集が必要であると考えた。
 また、心の健康予防はIASCの資料によると「メンタルヘルスと心理社会的サポート(Mental Health and Psycho- social Support: MHPSS)」と呼ばれており、「心理社会的な健康を守り促進すること、またメンタルヘルス問題を予防したり治療したりすることを目指した、現場や外部からのあらゆるタイプの支援」と定義されている。この観点から私達が収集する情報のステークホルダー(利害関係者)は学会員はもとより、適切な情報を市民にまで広げることへの有意味性を考慮した。
 心の健康予防班では情報のステークホルダーをIASCの資料から検討し3種に分類し、情報収集のグループを配置した。
 
➀医療者グループを8名(最前線の医療者、管理者、その他医療従事者)
➁患者及び対象者グループ8名(患者と介護者)
➂市民グループ7名(市民全体、高齢者、産婦人科系、こどもの保護者、スポーツトレーニング関係、就労者、その他医療者)
 
 そして、これらの活動と情報の統合者としてのインテグレーターを1名とした。各班の特色が出るように自由な発想を持って活動を行った。
 
1−3, 心の健康予防のこの先に向けて
 
 今回、活動を通して各グループに共通される課題は、
 
 ①成果をどのように広報し届けることができるか
 ②この活動には持続可能性があるのか
 
であった。①COVID-19に関する情報は実際に検索してみると大量に存在する。収集した情報はその中に埋もれないために「届く情報」でなければならない。そのため、学会のホームページに掲載するだけではなく、積極的に個人のSNSの 繋がりを使い、そのリンクの中で情報の拡散を図る。②先に述べたように心の健康予防は理学療法士によって直接介入できない分野である。しかし、心の健康の維持には専門家による介入を超えた取り組みが必要である。活動を通して私達は「焦点を絞った非専門家によるサービス」での活動可能性を模索し、心の健康予防について継続的に取り組みを行うべきであると考えた。今回の主目的はCOVID-19に関する情報収集であったものの、活動を通して心の健康予防に対する理学療法士としての可能性を覚えることができた。どのように理学療法士が心の健康予防に携わっていけるのか、今後もそのような観点から活動の持続可能性を検討したい。
 
1−4,班員(順不同、敬称略)
【市民班】
石光 雄太         山口宇部医療センター(班長)
小牧 隼人         馬場病院
徳弘 郁絵         細木病院
田中 繁弥         高崎健康福祉大学
上野 かおり      井上病院
坂本 親宣         鹿児島医療福祉専門学校
井上 大樹         いちはら病院/筑波大学大学院
 
【医療者班】
清水 千穂         広島逓信病院(班長)
田中 良美         広島逓信病院
藤本 昌央         白鳳短期大学
今別府 和徳      芦屋中央病院
荒木 智子       一般社団法人WiTHs/大阪行岡医療大学
佐藤 正司         帝京平成大学
橋本 賢次郎      茅ヶ崎新北陵病院
永倉 豊          奈良県立医科大学附属病院
 
【患者及び対象者班】
黄 啓徳             島原病院(班長)
飯田 有輝         豊橋創造大学
藤生 大我         社会福祉法人認知症介護研究・研修東京センター
月井 直哉         介護老人保健施設うららく
池田 淳子         東京総合保健福祉センター江古田の森
宮城 春秀         南町田病院
中山 英俊         医療法人生徒会てらもと通所リハビリテーションセンター
貝沼 将志         訪問看護ステーション
 
【統合者(インテグレーター)】
堀 寛史   びわこリハビリテーション専門職大学