腰椎椎間板変性とBMIにおける過体重および肥満との関連について

【論文の概要】

背景

腰痛は社会経済的負担が高く、健康管理も困難とする。動作を困難にし、QOLを下げ、働く能力を奪い、精神的苦痛を与え、健康管理費用を増加させることが報告されている。腰痛の原因のひとつに椎間板変性があり、MRIで確認することが可能である。更に、過体重および肥満と椎間板変性の間には関連があることも報告されている。一方、世界中の成人のうち23.2%が過体重、9.8%が肥満と言われている。

目的

先行研究では、過体重、特に肥満と腰痛には関連があり、また、椎間板変性と腰痛との間にも関連があることが報告されてきた。しかし、BMIと腰椎椎間板変性との間に関連があるかどうかは不明である。本研究の目的は、過体重および肥満と、腰椎椎間板変性の有無、範囲、程度との関連性を明らかにすることである。

方法と結果

対象は中国南部の一般成人2,599名(男性1,040名、女性1,559名)とし、年齢は41.9±9.4歳(21~63歳)であった。対象者を、低体重(BMI<18.5kg/m2、187名、7.2%)、正常(BMI18.5-23.0kg/m2、1,243名、47.9%)、体重過多(BMI23.0-27.5kg/m2、937名、36.1%)、肥満(BMI>27.5kg/m2、230名、8.8%)を分けた。その対象者に対して、腰椎の磁気共鳴画像法(MRI)を受けてもらい、BMIと腰椎椎間板変性との間に関連があるのかを検討した。椎間板変性の評価には、degenerative disc disease(DDD) score[1-2.]およびSchneideman grade[3.]を用いた。

結果

対象者の72.7%にあたる1,890名の腰椎椎間板に、なんらかの変性を認めた。詳細は、L1-L2に9.2%、L2-L3に16.2%、L3-L4に28.9%、L4-L5に16.2%、L5-S1に49.0 %であった。性別と年齢とは、独立して関連がみられた。また腰椎椎間板変性の有病率と重症度は、BMIが増すごとに有意に増加していた。

【解説】

体重過多の者や肥満を呈する者の腰痛は、椎間板変性に由来する可能性があり、体重の増加が腰背部痛のリスクになることが示唆された。同様の結果は、他の人種や年代を対象とした研究でも報告されている[4-6.]。この研究は、2030年までを予定とした研究の横断的研究である。今回の結果から、体重過多や肥満を呈する者と腰背部痛の関連性を推測することが出来る。腰背部痛と椎間板の変性の関連性と体格との関連性については、今後18年かけて追跡していくなかで、そのいずれが先行するのかを含め、明らかになることが期待される。

【参考文献】

  1. Cheung KM, Karppinen J, Chan D, Ho DW, Song YQ, Sham P, et al. Prevalence and pattern of lumbar magnetic resonance imaging changes in a population study of one thousand forty-three individuals. Spine 2009; 34: 934-940
  2. Jim JJ, Noponen-Hietala N, Cheung KM, Ott J, Karppinen J, Sahraravand A, et al. The TRP2 allele of COL9A2 is an age-dependent risk factor for the development and severity of intervertebral disc degeneration. Spine 2005; 30: 2735-2742.
  3. Schneiderman G, Flannigan B, Kingston S, Thomas J, Dillin WH, Watkins RG. Magnetic resonance imaging in the diagnosis of disc degeneration: correlation with discography. Spine 1987; 12: 276-81.
  4. De Schepper EI, Damen J, van Meurs JB, Ginai AZ, Popham M, Hofman A, et al. The association between lumbar disc degeneration and low back pain: the influence of age, gender, and individual radiographic features. Spine 2010; 35: 531-536.
  5. Videman T, Gibbons LE, Kaprio J, Battie MC. Challenging the cumulative injury model: positive effects of greater body mass on disc degeneration. Spine J 2010; 10: 26-31.
  6. Hassett G, Hart DJ, Manek NJ, Doyle DV, Spector TD. Risk factors for progression of lumbar spine disc degeneration: the Chingford Study. Arthritis Rheum 2003; 48: 3112-3117.

2012年10月01日掲載

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