正常足と扁平足を区別するためのNavicular Index

Roth S, Roth A, Jotanovic Z, Madarevic T : Navicular index for differentiation of flatfoot from normal foot. Int Orthop. 2013 Apr 12. [Epub ahead of print]

PubMed PMID:23580031

  • No.1306-1
  • 執筆担当:
    弘前大学
    医学部保健学科
    理学療法学専攻
  • 掲載:2013年6月1日

【論文の概要】

背景

 扁平足は足部の内側アーチが地面に接触するような状態で、どの年齢層でも起こり得る変形であるが、最も頻繁にみられるのは小児期である。小児の扁平足にはflexible flatfootとrigid flatfootがあり、前者は非荷重時のアーチは正常であるが荷重時に扁平化するもの、後者は荷重の有無にかかわらずアーチが扁平化しているものと特徴付けられる。flexible flatfootの診断において重症度を決定する際、footprintと同等に荷重時のX線撮影によるたくさんの種類の特殊な角度計測値が用いられ、先行研究でも報告されている。しかし、これらの計測は決して簡単ではなく、費用もかかり、X線写真の質と検者のスキルに依存する。そこで著者らは足部縦アーチ高の程度を表す舟状骨高に着目した。

目的

 本研究の目的は、扁平足を明確に診断する方法を簡略化するために、舟状骨高と最もよく使用されるX線計測角度、踵骨外反角、footprintとの相関関係を検討することである。

方法

 1997~2010年までの間で、特発性のflexible flatfootで手術的治療を行った子ども218名(436 足)に対して、術前・術後で臨床評価とX線学的評価を行い、そのうち、121名(242足)を抽出した。内訳は、男子78名(64.46%、11.08±1.58歳)、女子43名(35.52%、10.74±1.45歳)で、全体では8~15歳(10.96±1.54歳)であった。術前はすべての評価で扁平足と診断されたが、術後の値が正常範囲になり健常足に該当した足を、扁平足群と比較するための健常足群とした。術前・術後でのnavicular indexは、側面X線像により舟状骨高とアーチ長から算出した(比率計算なので、撮影画像の大きさに影響を受けず、誤差が少ない)。術後フォローアップ期間は3~8年(平均5年)であった。用いた手術方法は、calcaneo-stop法(詳細は省略)であった。navicular indexと他の角度計測値との相関関係の検討には、Pearsonの積率相関係数を用い(p<0.05)、相関の強さの判定はColtonのガイドラインにしたがった。navicular indexを用いて最も効果的に扁平足と正常足を判別するための至適cut-off値を決定するために、ROC解析を用いた(p<0.05)。

結果

 navicular indexは縦アーチ長を舟状骨高で割って得られる値であり、扁平足では4.75~31.2(中央値8.98、SD=4.65)、健常足では3.58~22.6(中央値5.48、SD=3.67)であった。他の角度計測値との相関係数は、術前・術後ともほとんどが有意な相関を示し、Coltonのガイドラインでは概ね良好であった。ROC解析では、ROC曲線下の面積が0.861で、navicular indexは扁平足と正常足とを分離する良好な尺度となりうることが示され、その境界域は6.7407(感度86%、特異度75%)であった。

議論

 本研究における最も重要な知見は、navicular indexが扁平足と正常足を区別する新しい尺度であることを立証できたことである。過去数十年間、扁平足の診断にはさまざまな方法が提案されてきたが、今日までまだ扁平足を診断する統一された評価法は見当たらない。
 先行研究において、足部形態の臨床的およびX線学的計測が行われており、多くの場合X線側面像で得られた角度がより優れた方法として示されてきた。側面距骨中足骨角(Meary’s angle)、踵骨傾斜角(calcaneal pitch)、側面距骨踵骨角(talocalcaneal angle)および距骨舟状骨角(talonavicular angle)、footprint(Steheli’s arch index)、後足部外反角(heel valgus)は、正常な足部の角度が文献的に示されており、本研究における扁平足の症例に対しての評価にも用いて、これらの症例の値を、そのまま扁平足の境界値として使用した。
 我々の知る限りでは、X線撮影法による舟状骨高の計測を用い、足の大きさやX線照射の距離に影響を受けずに計算で求める方法を示した報告はない。我々の経験から、足アーチ長と舟状骨高を計測する方法は、距骨や舟状骨、踵骨の軸を定めて計測するよりも、非常に簡便でより正確であり、誤差が少ないことを確信している。上述したどのX線学的パラメータもnavicular indexとの相関が認められたことから、足部の状態を診る際に、この2つの計測(アーチ長と舟状骨高)のみで迅速で簡便な診断が十分に可能である。
 結論としては、他の角度計測を行わなくても舟状骨高(navicular index)をflexible flatfootの診断の基準値として用いることができ、正常(中央値5.48)、異常(中央値8.98)、cut-off値6.7407(感度86%、特異度75%)と定義できたことより、navicular indexは扁平足と正常足を区別する信頼性のある尺度であるといえる。

【解説】

 足部アーチの評価には、従来よりfootprint(足跡形状)が用いられてきた(参考文献[1]~[3])が、本来は骨格の配列をみて評価するべきであり、正確にはレントゲン計測が必要である。しかし、臨床場面では無症候性の扁平足に対して全症例にX線撮影を行うことが不可能なため、足長と舟状骨高の計測値から求めた足アーチ高簡易測定法(アーチ高率)が臨床的に用いられている。また、footprintを用いた評価も多くの研究者によって提案されているが、足アーチ高率との相関が低いことや、footprintは直接アーチの高さを計測する評価方法ではないため、妥当性が低いことも指摘されている(参考文献[4])。 
​ アーチ高率も本研究で提案されているnavicular indexも、概念としては同等である。アーチ高率は舟状骨高を足長で割った値であるので、アーチが低いほど値が低く、アーチが高いほど値は大きくなるが、逆にnavicular indexはアーチ長を舟状骨高で割って算出した値であり、アーチが高いほど値は低く、アーチが低いほど値が大きくなるので注意が必要である。ただ、アーチ高率では体表から舟状骨を触診するには検者の熟練が必要であることや、足趾変形がある場合に足長をそのまま用いてよいのかといった議論がある(参考文献[4]~[5])が、navicular indexではX線計測画像を用いて舟状骨高とアーチ長を計測しているので誤差は少なく画像の縮小率等に影響を受けない利点があり、cut-off値が明確になったことは有用である。 
​ 近年は、Foot Psture Index(FPI)(参考URL[1])を用いた非侵襲的な評価による研究も行われている。FPIは、距骨頭の触診、外果の上下のカーブ、踵骨の角度、距舟関節の突出、内側縦アーチ、後足部に対する前足部のアライメントの6項目を評価するもので、各項目につき、-2点から+2点までの5段階尺度で合計点は-12点(著明な回外)から+12点(著明な回内)となる。いずれも明確なcut-off値はなく、これら評価尺度間の関連性についても明確ではないので、今後の研究で明確になることが期待される。

【参考文献】

  1. Cavanagh PR, Rodgers MM:The arch index: a useful measure from footprints. J Biomechanics, 20:547- 551, 1987.
  2. Staheli LT, Chew DE, et al.:The longitudinal arch―A survey of eight hundred and eighty-two feet in normal children and adults. J Bone Joint Surg Am, 69:426-428, 1987.
  3. Kilmartin TE, Wallace WA:The significance of pes planus in juvenile hallux valgus. Foot Ankle, 13:53-56, 1992.
  4. Hawes MR, Nachbauer W, et al.:Footprints as measure of arch height. Foot Ankle, 13:22-26, 1992.
  5. Oda A and Tsushima H: Intra- and interrater reliability in measuring navicular height as the indicator of medial longitudinal arch of the foot. Med Biol, 153: 516-524, 2009.

【参考URL】

  1. Dr Anthony Redmond:The Foot Posture Index (FPI-6).
    http://www.leeds.ac.uk/medicine/FASTER/fpi.htm

2013年06月01日掲載

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