本研究結果は、足背屈筋力が歩行速度と対称性を改善するための重要な要因であることに加え、歩行持久力の単独での決定因子になり得ることを示唆した。
脳卒中後の6MWTでの歩行持久力の低下はすでに報告されており、健常成人の40%程度としている。
麻痺側の足背屈筋力と底屈筋力の低下は報告されているが、この原因は麻痺側下肢の主働筋の運動中の運動単位の活性化の減少、運動単位の減少、主働筋の発火割合の減少、または拮抗筋収縮の増加が考えられる。
多重線形回帰解析の結果により足背屈筋力が6MWT距離の予測に最も有効であることが明らかにされた。足背屈筋の脆弱性は遊脚期の不十分な足部クリアランスや踵接地後の重心移動中に遠心性収縮が不十分となり、それによる歩行速度の低下を生じ、また、足底屈筋に痙縮があれば、遊脚期に強力な足背屈筋力、股・膝屈曲が必要となり、エネルギー消費が増加し、歩行持久力は低下する。本研究でも麻痺側足背屈筋力と歩行速度(r=.727, P竕、.000)。歩行持久力(r=.793, P≦.000)に有意な相関関係があった。
しかし一方、底屈筋の痙縮は6MWT距離に相関せず(r=‐.062, P=.635)、歩行速度にも相関しなかった(r=‐.178, P=.158)が、この結果は先行研究との測定方法の違いから生じた可能性がある。