内側型変形性膝関節症に対する外側ウェッジインソールの効果のシステマティックレビュー

Penny P, Geere J, Smith TO: A systematic review investigating the efficacy of laterally wedged insoles for medial knee osteoarthritis. Rheumatology International. 2013; 33(10):2529-38.

PubMed PMID:23612781

  • No.1503-2
  • 執筆担当:
    鹿児島大学医学部
    保健学科理学療法学専攻
  • 掲載:2015年3月2日

【論文の概要】

背景

 変形性膝関節症は最も一般的な関節疾患であり、45歳以上の罹患率は12.5%と報告されている。外側ウェッジインソールは変形性膝関節症の保存療法の一つとしてよく用いられている。外側ウェッジインソールは、大腿脛骨関節のアライメント異常を修正し、内側コンパートメントの負荷を減少させることにより、疼痛の軽減と運動機能を向上するとされる。
 外側ウェッジインソールに関しては、いくつかのレビューが報告されているが、相反する結果となっており、一致した見解を得るには至っていない。例えば、Brouwerらは中程度の重症度の症例については、外側ウェッジインソールは症状を緩和し、非ステロイド性抗炎症薬の使用量を減少させると報告している。一方、Reillyらは明確な長期的効果は認められなかったと報告している。

目的

 本研究の目的は、システマティックレビューにより、内側型変形性膝関節症に対する外側ウェッジインソールの効果を明らかにすることである。

方法

 片側の変形性膝関節症を対象に、外側ウェッジインソールを用いた介入群と、フラットインソールやアーチサポートなどを用い介入したコントロール群を比較した研究を分析対象とした。また、外側ウェッジインソール単独の効果を分析するために、ストラップや膝装具を併用した研究は除外した。1948から2012年8月までにMedline,EMBASE,AMED,CINAHL,Cochran Library,Cochran Controlled Trials Registerに登録された文献、および世界保健機関の国際臨床試験登録プラットフォーム、米国商務省情報センター、英国臨床研究ネットワークポートフォリオデータベースなどに登録された未刊行の情報をもとに、システマティックレビューを行った。
 Cochrane Back Review Groupの基準をもとに、2名の評価者が文献の取り込み及び、研究の質を判定した。疼痛、Western Ontario and McMaster Universities Arthritis Index (WOMAC)に基づく身体機能、鎮痛剤と非ステロイド性抗炎症薬の使用量をアウトカムの指標として用い、メタアナリシスを行った。なお、効果量としては平均差もしくは、標準化平均差を用いた。

結果

 関連のあった報告は3,105件あり、このうち取り込み基準に該当したものは10件であった。総対象者数は1,095名(男性331名,女性764名)であり、平均年齢は62.4 ± 4.3歳(54.7-64歳)であった。535名が外側ウェッジインソールを用いた介入群であり、509名がコントロール群であった。発症からの期間は3.8-8.8年であり、研究間にバラツキが認められた。用いられた外側ウェッジインソールの傾斜角度は5°から7°であった。また、3つの研究では、症例個々に応じたカスタムメイドの外側ウェッジを使用していた。
 疼痛については介入3ヶ月後(WOMAC,P=0.99;VAS,P=0.23)、介入6ヶ月後 (WOMAC,P=0.07;VAS,P=0.91)のいずれでも、外側ウェッジインソール群とコントロール群に有意な差を認めなかった。同様にWOMACの身体機能についても、介入3ヶ月後(P=0.16)、介入6ヶ月後(P=0.26)のいずれにも有意な差を認めなかった。鎮痛剤の使用量については有意な差を認めなかったものの(P=0.80)、非ステロイド性抗炎症薬の使用量については外側ウェッジインソール群で有意に低値を示した(P=0.0007)。

考察

 本研究の結果では、内側型変形性膝関節症に対する外側ウェッジインソールを用いた介入による、疼痛の軽減や身体機能の向上という明確なエビデンスを得ることはできなかった。一方で,非ステロイド性抗炎症薬に使用量は外側ウェッジインソールの使用により、有意に低値を示した。また、有意な差は認めなかったものの、介入6ヶ月後の疼痛(WOMAC)では外側ウェッジインソール群で低値を示した。
 本研究に採用された論文の40%では、バイアスのリスクが少なく研究の質は高かった。しかし、今回の結果ではサンプルサイズが小さいため、個々の研究結果の影響を受けやすい可能性がある。外側ウェッジインソールの効果を明らかにするためには、外側ウェッジの傾斜角度による効果の差異、靴の影響などを踏まえさらに検討を行う必要がある。また、罹患期間、重症度(Kellgren-Lawrence分類)、BMIなどを変数としてサブグループ解析を行い、外側ウェッジインソールが効果的な症例について分析する必要があると考えられた。

【解説】

 内側型変形性膝関節症に対する外側ウェッジインソールの効果については、バイオメカニクスの観点から多くの報告がされている。多くの報告では、大腿脛骨関節の内側コンパートメントへの負荷を、外的な膝関節内反モーメントを指標として分析している。外側ウェッジインソールは、足圧中心点を外側へ移動させ、前額面における膝関節に対する床反力のモーメントアームを減少させることにより、外的な膝関節内反モーメントを減少させると報告されている1)。また、外側ウェッジにストラップを付加した方が、効果が高いとする報告もある2)。一方で、ストレンゲージを内蔵した人工関節を用いた研究では、大腿脛骨関節の内側コンパートメントの関節応力は変化しないとする報告もある3)
 このような研究間の相違の背景には、様々な要因が考えられる。考察で述べられているように、外側ウェッジインソールの効果を明らかにするためには、症例の属性に加え外側ウェッジの形状やストラップの有無を考慮した研究の蓄積が必要と考えられる。

【参考文献】

  1. Hinman RS, Bowles KA, Metcalf BB, Wrigley TV, Bennell KL: Lateral wedge insoles for medial knee osteoarthritis: effects on lower limb frontal plane biomechanics. Clin Biomech (Bristol, Avon). 2012; 27(1):27-33.
  2. Kuroyanagi Y, Nagura T, Matsumoto H, Otani T, Suda Y, et al.: The lateral wedged insole with subtalar strapping significantly reduces dynamic knee load in the medial compartment gait analysis on patients with medial knee osteoarthritis. Osteoarthritis Cartilage. 2007; 15(8):932-6.
  3. Kutzner I, Damm P, Heinlein B, Dymke J, Graichen F, et al.: The effect of laterally wedged shoes on the loading of the medial knee compartment-in vivo measurements with instrumented knee implants. J Orthop Res. 2011; 29(12):1910-5.

2015年03月02日掲載

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