亜急性期の麻痺手に対する促通反復訓練の有効性(ランダマイズされた比較試験)

Shimodozono M, Noma T, Nomoto Y, Hisamatsu N, Kamada K, Miyata R, Matsumoto S, Ogata A, Etoh S, Basford JR, Kawahira K:Benefits of a Repetitive Facilitative Exercise Program for the Upper Paretic Extremity After Subacute Stroke: A Randomized Controlled Trial
Neurorehabilitation and Neural Repair 2013, 27(4) 296 –305

PubMed PMID:23213077

  • No.1504-1
  • 執筆担当:
    鹿児島大学医学部
    保健学科理学療法学専攻
  • 掲載:2015年4月4日

【論文の概要】

背景・目的

 脳卒中片麻痺に対するリハビリテーションアプローチは数多く開発されているが、特に上肢に対するアプローチで十分と思えるものはない。システマティックレビューでは最適な量は示されていないが、治療時間と反復回数が麻痺の回復と関連づけられている。また、課題関連トレーニング(task-related training)は有望と思えるが、適応が難しい場合がある。我々はこれらの有効とされる基本的な要素を基礎として、反復刺激に神経促通手技を組み合わせた促通反復訓練(RFE)を実施している。RFEは、高頻度の反復と神経促通を組み合わせた、最近開発された脳卒中による麻痺肢に対するリハビリテーションアプローチである。我々はRFEが従来のリハビリテーションアプローチよりも、麻痺の回復段階改善により効果的だとする報告をしてきたが、物を操作するような機能面の改善に対する有効性は報告していない。

目的

 本研究の目的は、Action Research Arm Test(ARAT)とFugl-Meyer Arm Motor Scale (FMA)を指標にして、ランダマイズされた盲検比較試験デザインでRFEと従来のリハビリテーションアプローチの有効性を比較検討することである。

方法

 対象者は2008年10月から2010年3月までの間に2つのリハビリテーションセンターに入院した患者とし、乱数表を使用してRFEグループと従来のリハビリテーションアプローチを実施するコントロールグループへ無作為に分けられた。介入期間は4週間として、開始、中間、最終時にそれぞれ運動機能を評価した。入院患者はトータル259例であったが、発症からの時間や麻痺の程度などの除外基準をクリアしたのは52例で、RFEグループ27例、コントロールグループ25例に分けられた。最後まで参加できた対象者はRFEグループ26例、コントロールグループ23例であった。全ての対象者は、4週間の間、週5日間、1日40分間のトレーニングを受けた。更に、そのセッション後すぐに1日30分間、手を伸ばしてブロックやペグ等の大きさが違う物をつかむトレーニングを実施した。RFEグループでは、5から8パターンの練習を行い、1~2分の休みを挟んで1セット50回を2セットずつ、トータルで500から800回の反復練習を行った。コントロールグループでは関節可動域訓練、自己他動、抵抗と段階的な抵抗訓練、スケートボードやサンディングボードを使用した訓練、様々なサイズのブロックを使用したピンチや握りの練習をRFEグループと同じ時間実施して、その後のリーチトレーニングも同様に行った。

結果

 上肢機能で使用したARATはよく使用される信頼性の高い上肢機能評価で4つの小区分があり、最大57点である。また、FMAの上肢機能評価は33項目、0から66点で構成されている。
 ベースラインの比較にはカイ二乗検定を行い、各項目においてRFEグループとコントロールグループに違いは認められなかった。両群における効果の違いを比較するのには、反復測定の共分散分析を用いた。結果、ベースラインと2週間後、ベースラインと4週間後の変化をRFEグループとコントロールグループで比較したところ、トータルARATではそれぞれ有意にRFEグループの差が大きかったが、各項目では有意差がみられない項目もあった。また、FMAでは2週間後と4週間後のそれぞれで有意にRFEグループの差が大きい結果であった。

考察

 今回の結果は、全体的に見てこれまでの我々の報告を支持しており、RFEの有効性の対象を広げていると思える。これまでの報告と同様に麻痺の回復が認められ、結果には示していないが、RFEによって筋緊張増加などの悪影響もみられなかった。刺激の量を統一するために介入時間を揃えたが、高頻度の反復刺激は有益でありRFEグループの患者の方がより能動的に行っていたと思える。また、RFEでは伸張反射を利用するなど、生理学に基づいた有効なテクニックを備えている。今回の研究ではその後のフォローアップができていないなどの不足部分はあるが、RFEは従来型のリハビリテーションより有効だと考えられる。

【解説】

 促通反復療法は川平法と呼ばれるように、鹿児島大学リハビリテーション医学講座の川平名誉教授が提唱された方法である。この方法についての詳細は本が出版されているので、興味のある方はそちらを読んでいただきたい。この論文は現在の下堂園教授が書かれたものであるが、結果の分析に共分散分析を用いるなど、丁寧に分析されている印象を受ける。Randomized Controlled Trialにしては結果もきれいに違いが出ていると思えるので、RFEの有効性がうかがわれる。鹿児島大学リハビリテーション医学講座ではRFE以外にも振動刺激や経頭蓋磁気刺激療法、電気刺激、装具療法、薬物療法など利用可能な要素を全て治療に役立てようとする姿勢に共感が持てる。今後の研究発展に期待したい。

【参考文献】

  1. Kawahira K, Shimodozono M, Ogata A, Tanaka N. Addition of intensive repetition of facilitation exercise to multidisci-plinary rehabilitation promotes motor functional recovery of the hemiplegic lower limb. J Rehabil Med. 2004;36:159-164.
  2. Kawahira K, Shimodozono M, Etoh S, Kamada K, Noma T, Tanaka N. Effects of intensive repetition of a new facilitation technique on motor functional recovery of the hemiplegic upper limb and hand. Brain Inj. 2010;24:1202-1213.
  3. Kawahira K, Noma T, Iiyama J, Etoh S, Ogata A, Shimodozono M. Improvements in limb kinetic apraxia by repetition of a newly designed facilitation exercise in a patient with cortico-basal degeneration. Int J Rehabil Res. 2009;32:178-183.

2015年04月04日掲載

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