ダイナモメトリーはCOPD患者の筋肉量減少(サルコペニア)のリスクを予測できるか?

Ramos D,Bertolini GN,Leite MR,Carvalho Junior LC,da Silva Pestana PR,dos Santos VR,Fortaleza AC,Rodrigues FM,Ramos EM. Is dynamometry able to infer the risk of muscle mass loss in patients with COPD?. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2015 Jul 21;10:1403-7

PubMed PMID:26229459

  • No.1511-1
  • 執筆担当:
    畿央大学健康科学部
    理学療法学科
  • 掲載:2015年11月1日

【論文の概要】

背景

 サルコペニアは筋肉量の減少および筋力低下によって特徴づけられる。また、COPD患者にとっては、加齢と疾患の両側面によって筋肉量の減少がみられる。筋肉量減少や身体組成の評価はいくつかの方法が提案されている。それらは高精度にもかかわらず、高い技術や高価な設備を必要とする。

目的

 本研究の目的は、Dual Energy X-Ray Absorptiometry (DEXA)での測定された筋肉量減少の存在を簡易的なダイナモメーターで推測できるかどうかを明らかにすることである。

方法

 安定した57名のCOPD患者に対して身体特徴、肺機能、運動能力、身体組成、筋力を評価した。DEXA (Hologic model QDR machine dials 2000/Plus; Hologic, Waltham, MA, USA) により、『upper limbs lean mass + lower limbs lean mass [kg]/height [m]2』を算出し、対象者をhigh lean mass (HLM) or low lean mass (LLM) に分類した。膝伸展力は、digital dynamometer (Force Gauge® brand, FG -100 kg, Sao Paulo, Brazil) により計測した。また、2値ロジスティック回帰モデルにより、膝の伸展力(ダイナモメトリー)が筋肉量減少(DEXA)を推論できるかどうかを検証した。

結果

 57名(女性20名、男性37名)のCOPD患者において、1秒量/予測値(%)は、男女間で有意差は認められなかった。25名においてはサルコペニアを有しており、そのほとんどがLLM群に含まれていた。LLM群の男性は、サルコペニアを有さない患者と比較し、低体重、低BMI、低膝伸展力であった。LLM群の女性は、HLM群と比較して四肢がやせ細っていた。また、性別、病期、運動能力にかかわらず、膝伸展力の低下した患者は、5.93倍筋肉量減少を有する可能性が高かった(P=0.045)。

考察

 COPD患者における筋力と筋肉量との関係に焦点を合わせた研究はわずかである。Villacaらは、ダイナモメーターによる筋力とDEXAによる筋肉量との関連を報告した。Hillmanらは、身体組成とダイナモメーターによる筋力との関係を6分間歩行距離によって評価した。これらは筋力に基づいた筋肉量減少が推測可能かどうかを検証する最初の研究である。本研究ではCOPDにおける四肢骨格筋機能障害と局所組織の減弱の関係を証明し、膝伸展力で筋肉量減少が推測可能であることを示した。我々の研究結果の臨床的応用は、COPD患者の筋肉組成を推測するための利用しやすい代替手段となる。したがってこのタイプの評価が、より適切な治療につなげられ、COPD患者に対してより最適化された治療が実施されるようになると考えられる。

まとめ

 スモールサンプルにもかかわらず、安価でシンプルなテクニック(膝伸展のダイナモメトリー)によってCOPD患者における筋肉量減少=サルコペニアを推測できた。

【解説】

 本論文は、COPD患者の筋肉量減少=サルコペニアをダイナモメーターで推測できるかどうかを検討した論文である。簡便で比較的に容易に扱えるダイナモメーターによってサルコペニアを判断できれば、その後の理学療法をはじめ、栄養療法や薬物治療などにも展開でき、最適化された治療の提供が可能となるのかもしれない。さらに本国においては、超音波エコーやエラストグラフィなどの画像診断テクニックが普及しつつあり、本論文の評価項目との関係性が分析されれば、より確定された診断へと向かうと思われる。さらにサルコペニアにおけるバイオマーカーの探索や分子メカニズムの解明、分子生物学的な治療法なども明らかにしていくことが重要と考える。

【参考文献】

  1. Villaca DS, Lerario MC, dal Corso S, et al.: Clinical value of anthro¬pometric estimates of leg lean volume in nutritionally depleted and non-depleted patients with chronic obstructive pulmonary disease. Br J Nutr. 2008; 100: 380–386.
  2. Hillman CM, Heineche EL, Hii JW, Cecins NM, Jekins SC, Eastwood PR.: Relationship between body composition, peripheral muscle strength and functional exercise capacity in patients with severe chronic obstructive pulmonary disease. Intern Med J. 2012; 42: 578–581

2015年11月01日掲載

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