対象は、健康なオーバーヘッドアスリート29名58肩である(男性14名, 女性15名, 年齢;22.23±2.82歳, 身長;178.3±7.8cm, 体重;71.6±9.5kg, BMI;22.47±2.06, オーバーヘッドスポーツの活動時間;6.5±3.2時間/週, オーバーヘッドスポーツ歴;9.17±3.6年)。対象者が行っているスポーツは、バレーボール20名、テニス2名、水球3名、スカッシュ3名、バドミントン1名であり、全員がレクリエーションレベルである。取り込み基準は、年齢が18歳から30歳の間であること、オーバーヘッドスポーツの活動を少なくとも毎週2時間行っていることである。除外基準は、6ヶ月以内に肩関節痛があるもの、非投球側と比較して投球側の肩関節内旋制限が20°以上あるものである。
疲労課題前に、両側のAHDと投球側の肩甲骨位置の計測が行われた。次に、投球側のみ疲労課題が行われた。疲労課題後に、両側のAHDと投球側の肩甲骨位置の計測が再度行われた。
AHDの計測には、超音波画像診断装置を用いた。対象者は椅子に座り、肩関節0°外転位、45°外転位、60°外転位の肢位でAHDの計測が行われた。肩関節外転角度はデジタルインクリノメーターで規定され、超音波のプローブはAHDが最小となるように上腕骨の長軸と平行な面に設置された。
肩甲骨位置の計測には、3次元磁気センサを用いた。胸郭のレシーバーが胸骨に、上腕骨のレシーバーが三角筋付着部の遠位に、肩甲骨のレシーバーが肩峰に設置された。AHDの計測と同時に、肩甲骨の外旋角度・上方回旋角度・後傾角度が計測された。
投球側の肩関節周囲筋を疲労させるために、オーバーヘッドスポーツの活動による疲労に似た筋疲労を生じさせる課題を選択した。アスリートは片膝立ちとなり、投球側の肩関節を90°外転位・肘関節90°屈曲位とし、トレーニングウェイトを持ったまま肩関節の内外旋運動を繰り返し行った。内外旋運動のスピードは、メトロノームを用いて144ヘルツに統一された。疲労は、主観的な基準と客観的な基準の両方によって定義された。主観的な基準として、ボルグスケールが使用された。疲労度が20段階のうち14を越えた場合を疲労と定義した。また、客観的な基準として、疲労課題中の運動が評価された。疲労課題の運動スピードが遅い、上肢の位置が低い、もしくは前額面から逸脱する、全可動域での運動が実施できない場合を疲労と定義した。