デンマークに在住する心不全患者が退院後に在宅介護(入浴や食事、更衣などの基本ケア、または買い物や掃除などのIADL、または食事サービスを提供)または介護施設入所を開始した割合と、その利用者の特徴を明らかにすることが目的である。対象はデンマークの個人情報保護機関に2008年から2014年に登録された国民のうち、2008年に心不全による初回入院後生存して退院した37,735名とした。対照群は心不全患者1名につき心不全の診断がない5名を性・年齢をマッチングして割り当て187,735名とした。分析は両群の在宅介護または施設入所累積発生率と発生期間を調整変数として年齢・性別・配偶者の有無、併存疾患、競合リスクとして死亡を設定し比較した。5年間調査した結果、在宅介護の利用率は心不全患者24.1%(hazard ratio; HR 2.02 [1.96-2.09])、対照群9.2%、介護施設入所は心不全患者3.9%、対照群1.7%(HR 1.91[1.77-2.06])であった。死亡は在宅介護利用では心不全患者21.5%、対照群6.0%であり、施設入所では心不全患者31.8%(HR 1.91[1.77-2.06])、対照群8.4%であった。在宅介護利用期間は心不全患者152日、対照群646日であり、施設入所期間は心不全患者464日、対照群917日であった。在宅介護に至る要因は高齢(HR 1.08[1.07-1.08]/1年増)、独居(男性HR2.22[2.15-2.30]、女性HR1.98[1.90-2.06])、COPD(HR1.88[1.83-1.94])の特徴があり、介護施設入所では高齢(HR 1.91[1.77-2.06])、独居(男性HR 2.25[2.08-2.43]、女性HR2.02[1.83-2.23])、脳血管疾患の併存(HR 2.71[2.53-2.90])であった。心不全患者では配偶者や家族のサポートや併存症が退院後のサービス利用に関わる。