NMESは、物理療法の一つの治療法として、以前から広く用いられてきた。近年、NMESによる治療は、慢性閉塞性肺疾患患者や慢性心不全患者に対して、または集中治療領域でも適用されるようになってきており、その対象範囲が拡大してエビデンスの蓄積が待たれている分野である1, 2)。NMESは電気刺激により筋収縮を起こすことができるため、特に自発的な筋収縮が十分に発揮できないような患者において、その筋萎縮の予防や筋力向上に役立つことが期待されている。
血液透析患者は、身体機能が著しく低下していることが広く知られている3)。週3回、1回4~5時間の血液透析治療やその後の疲労感に伴う身体活動量の低下は、筋力をはじめとした身体機能の低下に拍車をかける。そこで、近年では血液透析患者の身体機能を改善するために行う運動療法が注目され、エビデンスが蓄積されてきている4)。Dobsakら5)は、血液透析患者の身体機能を改善させるための方法としてNMESを採用し、身体機能やQOLの改善に対する有効性を示した。本研究では、さらにNMESの設定に着目し、低周波数・低強度のNMESであっても血液透析患者の運動耐容能を改善させることを示した。そのため著者は、従来用いられているNMESの痛みに耐えることが難しい患者にとっては低周波数・低強度のNMESが一つの選択肢になり得ることを提案した。
本研究は無作為化比較試験であったもののHG群とLG群の介入前の筋力に有意差を認めたため、身体機能に対する介入の効果については患者背景を考慮したうえで結果を理解する必要がある。しかし、LG群の6分間歩行距離の変(403.8±90.6m→428.9±87.4m)は臨床的に意味があると報告されている20mを超えており、一定の効果は表れていると考えられた6)。一方で、筋力や炎症性マーカーへのNMESの効果や設定の影響は不明であったため、今後のさらなる検討が必要である。