腰痛を有する高齢者における早期の画像検査と臨床的予後の関連
Jarvik, Jeffrey G., et al.: Association of early imaging for back pain with clinical outcomes in older adults. Jama. 2015; 313 (11): 1143-53.
PubMed PMID:25781443
- No.1903-2
- 執筆担当：
東京工科大学 医療保健学部 理学療法学科
三根 幸彌 - 掲載：2019年3月14日
【論文の概要】
本研究は、腰痛を有する高齢者に対する早期の画像検査と臨床的予後の関連を調査するための前向きコホート研究であった。対象は65歳以上の腰痛を有する患者2876人であり、早期X線フィルム群（n=1174）、X線フィルム対照群（n=1174）、早期MRI・CT群（n=349）、MRI・CT対照群（n=349）の内訳であった。早期の画像検査は、初診から6週間以内に行われた場合と定義された。3・6か月後、1年後の全てのフォローアップ評価において、各群間において痛み、機能障害、健康関連QOLにおいて有意差はみられなかった。また、全てのフォローアップ評価において、痛み、機能障害、健康関連QOLにおいて各群間で臨床的に意味のある差はみられなかった。さらに、早期に画像検査を行った場合、対照群と比較して医療費が有意に高かった。悪性腫瘍の発見率については、各群間で有意差はみられなかった。
【解説】
腰痛を有する患者に対してどのタイミングで画像検査を行うべきかということは、賛否両論を呼ぶ問題である。多くの臨床ガイドラインにおいて、高齢者の腰痛に対して早期の画像検査を行うことが推奨されているが1-3)、これは明確なエビデンスを伴っていない。労働災害に認定された若年~中年の腰痛患者を対象とした研究では、早期の画像検査（MRI）は腰痛の慢性化を助長する可能性があると報告されている4)。また、加齢に伴って腰椎の変性が進行しても無症状であるケースも多いため5)、腰痛を伴う高齢者に対する画像検査の有用性には疑問が残る。すなわち、腰痛を有する高齢者に対して画像検査を行っても、多くの場合は、同定された異常所見が症状に関わっているかどうかの判断を行うことが困難である。
本研究において用いられていた主な評価尺度は、Roland-Morris Disability Questionnaire（RMDQ）、痛みに伴う機能障害の尺度（0-24）、痛み、Brief Pain Inventory（BPI）、EuroQol health status measure（EuroQoL 5D）であった。本研究によると、早期の画像検査の有無によってこれらの評価尺度について臨床的に意味のある差はみられなかった。さらに、悪性腫瘍の発見率に有意差が見られなかったことから、早期画像検査を行わないことで悪性腫瘍を見逃す可能性が高まるということはないという可能性が示唆された。本研究の結果は、従来の臨床ガイドラインにおける推奨に異議を唱える結果であり、腰痛を有する高齢者に対して早期に画像検査を行うことは1年後の予後を改善せず、医療費の増大（早期X線フィルム群で27%増加、早期MRI・CT群で50%増加）を招く可能性があることを示唆している。
本研究において用いられていた主な評価尺度は、Roland-Morris Disability Questionnaire（RMDQ）、痛みに伴う機能障害の尺度（0-24）、痛み、Brief Pain Inventory（BPI）、EuroQol health status measure（EuroQoL 5D）であった。本研究によると、早期の画像検査の有無によってこれらの評価尺度について臨床的に意味のある差はみられなかった。さらに、悪性腫瘍の発見率に有意差が見られなかったことから、早期画像検査を行わないことで悪性腫瘍を見逃す可能性が高まるということはないという可能性が示唆された。本研究の結果は、従来の臨床ガイドラインにおける推奨に異議を唱える結果であり、腰痛を有する高齢者に対して早期に画像検査を行うことは1年後の予後を改善せず、医療費の増大（早期X線フィルム群で27%増加、早期MRI・CT群で50%増加）を招く可能性があることを示唆している。
【引用・参考文献】
- Chou, Roger, et al. "Diagnosis and treatment of low back pain: a joint clinical practice guideline from the American College of Physicians and the American Pain Society." Annals of internal medicine 147.7 (2007): 478-491.
- Chou, Roger, et al. "Diagnostic imaging for low back pain: advice for high-value health care from the American College of Physicians." Annals of internal medicine 154.3 (2011): 181-189.
- Bigos, S., et al. "Acute lower back problems in adults." Rockville, MD: Agency for Health Care Policy and Research (1994).
- Jarvik, Jeffrey G., et al. "Rapid magnetic resonance imaging vs radiographs for patients with low back pain: a randomized controlled trial." Jama 289.21 (2003): 2810-2818.
- Baker, Alexander DL. "Abnormal magnetic-resonance scans of the lumbar spine in asymptomatic subjects. A prospective investigation." Classic Papers in Orthopaedics. Springer, London, 2014. 245-247.
2019年03月14日掲載
