福祉機器を使用する介助者に対する評価表の開発と有効性の検討

Mortenson WB, Demers L, Fuhrer MJ et.al.: Development and preliminary evaluation of the caregiver assistive technology outcome measure J Rehabil Med. 2015; 47: 412-418

PubMed PMID:25783142

  • No.1906-01
  • 執筆担当:
    東京工科大学 医療保健学部 理学療法学科
    宮﨑 貴朗
  • 掲載:2019年6月1日

【論文の概要】

 福祉機器を使用している介助者に対し介護負担の度合いを評価するCATOM(Caregiver Assistive Technology Outcome Measure)評価表の開発経緯、その妥当性と再現性の検討結果を報告した。評価項目は、本研究グループの質的研究法によるフレームワーク、介護負担についての12の先行研究の評価表、要介護者と介助者のインタビュー内容などを検討し必要な評価項目を決定し、CATOMとマニュアル訂正版は臨床家によるレビューにより検討された。この過程により作成された評価表によりスクリーニングを実施し評価項目が検討され、3つの部分よりなる評価項目の質問内容が作成された。得られた所見に基づいて修正版を作成し、測定は福祉機器使用者の介助者(44名)の介護技術の影響を検討する介入研究の予備研究として行われた。これらのうち13名に6週後の再テストが実施でき、数量的に妥当性と再現性が検討された。ADLの各動作別、および全体の測定結果についての6週間後のテスト、リテストの級内相関係数はそれぞれICC0.88(95%CI 0.64-0.96)、0.86(95%CI 0.60-0.95)であった。CATOMは、外的および内容妥当性も良好で数量的評価が可能となる評価方法である。

【解説】

 福祉機器(Assistive Technology)が介護者へ与える介護負担の数量的評価ツールの実証分析である。介助者の介護負担については、先行研究におけるZarit1)、Stress Process Model2)が参考にされている。これまで福祉機器を使用する介助者についての介護負担についての研究はないため3)、介護者の介護負担については、質的データと量的データの両方を扱う混合研究法(ミックスドリサーチ)により、介助者への介護負担についてのインタビュー結果、実務者の評価結果、ならびに有識者の意見などの実証データから、評価のフレームワーク4)を決定し、本論文のCATOMを作成した。2018年にも著者らは、同ツールを使用してRCTデザインの福祉機器の使用効果について研究5)を行い、福祉支援機器使用による介護者負担の軽減効果などを報告している。在宅の要介護者の増加とともに、人的な介助だけではなく、様々な福祉機器使用のニーズは大きくなってくるものであり、CATOM評価表は、福祉機器の使用のみならず、介助者の介護負担度のエビデンス集積にとって非常に参考になるものと思われる。
 CATOM評価表の内容は以下のようにPart1からPart3の三つの部分より構成されている。
パート1:問題となる動作
パート2:・動作別の一次ストレス(危険性、不安感、疲労、身体的負担、嫌悪感を持つ頻度や時間)
      ・動作別の二次ストレス(住居環境面の空間的制約、精神的圧迫感、自由時間の喪失感などの
               程度)
パート3:広義の介助者の転帰(介助すること、自由時間のレジャー、自由時間増加の希望、自分の社会や
            家族とのかかわりをもつ時間などへの支援)
 
 本研究の今後の課題としては、ADLの動作別の検討は行われているが、福祉機器の種類による検討がなされていないことがあげられる。介護負担感を、全体的な介護負担ということではなく、福祉機器の導入効果について限定しており、福祉機器の有効性についてのエビデンスの集積には有効と考えられる。しかし、CATOMの評価測定所要時間は平均13分とされており、臨床において使用するにはまだ課題があるため、今後は、さらなるCATOMの妥当性を検討する研究が必要で、様々な障害を持つ対象者、問題となる動作へ対応した介入方法、地域における介入などの研究や、各機器の機能の代替性、使用する目的動作、使用者などについての検討も望まれる。

【引用・参考文献】

  1. Zarit, S. H:Do we need another "stress and caregiving" study? The Gerontologist 1989;29:147.
  2. Pearlin LI, Mullan JT, Semple SJ, Skaff MM:Caregiving and the stress process: an overview of concepts and their measures. Gerontologist 1990; 30: 583–594.
  3. Mortenson WB, Demers L, Fuhrer MJ, Jutai J, Lenker J, DeRuyterF.: How assistive technology use by individuals with disabilities impacts their caregivers: a systematic review of the research evidence. Am J Phys Med Rehabil 2012; 91: 984–998.
  4. Demers L, Fuhrer MJ, Jutai J, Lenker J, Depa M, De Ruyter F.: A conceptual framework of outcomes for caregivers of assistive technology users. Am J Phys Med Rehabil 2009; 88: 645–655.
  5. Mortenson WB, Demers L, et al: Effects of a caregiver-inclusive assistive technology intervention: a randomized controlled trial BMC Geriatrics 18: 97 2018.

2019年06月01日掲載

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