本研究は亜急性期および慢性期の脳卒中患者39名(脳卒中群)と健常成人21名(健常群)を対象として、Beat Alignment Test(BAT)によるリズム知覚スコアとリズム産生スコアを調査し、脳卒中群のリズム知覚スコアの特性、リズム知覚スコアと臨床的所見の関連、さらに脳卒中患者の歩行における時間的非対称性(temporal gait asymmetry: TGA)へのリズム産生能力の関与について検証を行った横断研究である。BATリズム知覚スコアの比較では、脳卒中群では健常群より有意に点数が低い結果となった(F1,56=17.5, P=.0001)。脳卒中患者におけるBATスコアと臨床所見の関係では、リズム知覚スコアはChedoke-McMaster Stroke Assessment(CMSA)の legスコア(Spearman ρ=.33, P=.04)とfootスコア(spearman ρ=.49, P=.002)に有意な相関を認めた。National Institutes of Health Stroke Scale、Montreal Cognitive Assessmentスコアとの相関は認められなかった。重回帰分析の結果、TGAはCMSA legスコア、脳卒中後の期間、リズム産生における非同期と関連があった(F3,35=12.8, P<.0001)。以上の結果から、リズム知覚は脳卒中後に障害され、TGAはリズム運動産生障害に関連することが明らかとなった。