骨直結(osseointegration)をした切断者の未来:システマティックレビュー

Gerzina C, et al.: The future of the amputees with osseointegration: A systematic review of literature. J Clin Orthop Trauma. 2020 (11):S142-S148

PubMed PMID:31992935

  • No.2010-05
  • 執筆担当:
    群馬大学大学院保健学研究科
    山路 雄彦
  • 掲載:2020年10月13日

【論文の概要】

 Osseointegration(骨直結、以下OI)に関する9件の論文より、OIにおける感染、インプラント周辺での骨折、QOL、機械的な損傷、経済的影響などの欠点と指摘されている部分の検証を行った。感染においては、感染率(7論文)は18%から63%であった。多くの感染は表面的であり抗生物質で治療できるとしている。インプラント周囲での骨折(3論文)は0%から7%であった。QOLはQ-TFA(Questionnaire for Persons with a Transfemoral Amputation)では3論文全てで大幅に改善し、SF-36においても2論文全てで大幅な改善があったとしている。機械的な破損率(2論文)は8%と31%、緩みによるインプラント除去率(2論文)が3%と7%と報告されている。従来の義足とOI義足(骨直結義肢)の経済的な比較(1論文)では、OI義足におけるコストの方が高いことを報告している。今後の従来型の義肢との比較研究が必要であるが、OI義肢は、深部感染、再手術、骨折などの重大な問題は少なく、生活の質の向上をもたらすとしている。

【解説】

 Osseointegrati)on現象は、骨とチタンが拒否反応なく結合する現象であり、osseo-integrationは造語で、ギリシャ語のosseo(骨)と英語のintegration(統合、融合)を組み合わせている。歯科治療で普及しているデンタルインプラント治療の基礎となった技術である。このosseointegrationは義肢にも応用され、ヨーロッパでは臨床研究が進められている。日本では骨直結義肢と呼ばれ、義肢装具のテキストにて海外で研究開発中の技術として紹介されていることが多い。骨直結義肢はソケットを必要としないために脱着が簡単であり、床からの感覚入力に優れ、患者の満足が高いなど利点が多い反面、骨と義肢を接続するアンカー周囲での感染、骨折、アンカーの緩みによるアンカー抜去や再手術などの問題もある。骨直結義肢の報告は1985年頃から始まり、既に30年以上経過するが普及が進まない要因に諸問題の解決が進んでいないことが類推される。本論文は、骨直結義肢で問題となる感染、インプラント周辺での骨折、インプラントなどの機械的な損傷、経済的影響の程度を明らかにする目的で調査されている。報告では感染などはあるものの重篤なものではないとしているが、少なからずこれらの諸問題が0ベースに近くならなければ普及することは難しい。しばらくの間、骨直結義肢は教科書での紹介レベルに留まる可能性は大きいと思われる。

【引用・参考文献】

1)  Brånemark PI: Osseointegration and its experimental background: J Prosthet Dent.
   1983, 50(3):399-410.
2)  Hagberg L, Brånemark R, Hägg O: Questionnaire for Persons with a Transfemoral
   Amputation (Q-TFA): initial validity and reliability of a new outcome measure
       : J Rehabil Res Dev.2004, 41(5):695-706.
3)  Brånemark R, Berlin O, Hagberg K, Bergh P, Gunterberg B, Rydevik B: A novel
   osseointegrated percutaneous prosthetic system for the treatment of patients
   with transfemoral amputation: A prospective study of 51 patients. Bone Joint J.
   2014, 96-B(1):106-13
4)  青木主税,清水順市他.リハビリテーション義肢装具学:メジカルビュー社,東京,
   2017,pp.190-192.

2020年10月13日掲載

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