歩行困難な脳卒中患者における早期ロボットアシスト歩行練習:単盲検ランダム化比較試験

Mayr A, Quirbach E, Picelli A, Kofler M, Smania N, Saltuari L. Early robot-assisted gait retraining in non-ambulatory patients with stroke: a single blind randomized controlled trial. Eur J Phys Rehabil Med 2018; 45(6):819-826.

PubMed PMID:29600688

  • No.2102_01
  • 執筆担当:
    順天堂大学保健医療学部理学療法学科
    高橋 容子
  • 掲載:2021年2月5日

【論文の概要】

本研究は、亜急性期脳卒中患者(発症後8週間未満)74名を対象とし、ロボットアシスト歩行練習の歩行能力に対する効果を、従来の理学療法と比較した単盲検ランダム化比較試験である。Functional ambulation category (FAC) が1または2で、歩行に介助が必要な患者を対象とした。対象者はランダムに2群(ロボット歩行追加群・PT追加群)に分けられ、両群が2時間の練習プログラムを週に5回、合計8週間実施した。ロボット歩行追加群では、基本練習に加えLokomatを用いたロボットアシスト歩行練習を実施した。PT追加群では、基本練習に加え従来の理学療法を実施した。主要アウトカムのEmory Functional Ambulation Profile (mEFAP) は、両群において、介入前と比較し介入後に有意に改善した(p<0.001)。一方で、2群間にmEFAPの有意な差は認めなかった。

【解説】

 脳卒中患者に対するロボットアシスト歩行練習は、対照群と比較して有意な効果を示した報告もある(Review, Bruni et al., 2018)。これらの先行研究の結果をもとに、本研究では脳卒中後の亜急性期の時期に焦点を当てている。主要アウトカムはmEFAPであり、これは床上、カーペット上、階段などの5つの異なる環境で歩行する際にかかる時間を加算するものである。このアウトカムにおいて、介入群と対照群の間に有意差は認めなかった。この理由として、著者らは、亜急性期のためにロボットアシスト歩行練習の運動強度を高く設定できなかったことや、Lokomatの特性上、姿勢制御を練習する要素が含まれなかったことなどを挙げている。また、本研究のアウトカムは、歩行のみに焦点を当て、評価時期も8週間の介入終了時点のみであった。論文では歩行時に介助を要さなくなった者の割合が介入群で58%、対照群で46%となった結果も示されており、有意差はないものの、わずかに介入群において良い結果となっている。著者らは、この結果からも、歩行機能のみでなく日常生活動作の自立度や参加をアウトカムに加えることや、数ヶ月単位のフォローアップ評価も実施していく必要があると述べている。
 歩行アシストロボットには、Lokomatのようにプログラムされた歩行パターンを再教育するものや、患者個々の運動機能に合わせ関節ごとにアシスト調節できるものなどがあり、その特性は様々である。各ロボットの特性や長所、短所を理解した上で、標的とする病期や運動機能、最適な運動強度や介入期間などを多面的に判断していく必要があると考えられる。

【引用・参考文献】

Bruni MF, Melegari C, De Cola MC, Bramanti A, Bramanti P, Calabro RS. What does best evidence tell us about robotic gait rehabilitation in stroke patients: A systematic review and meta-analysis. J Clin Neurosci 2018; 48: 11-17.

2021年02月05日掲載

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