女性アスリートの膝前十字靭帯損傷リスクを軽減するための神経筋トレーニングにおける重要な構成要素:メタ回帰分析

Sugimoto D, Myer GD, Barber Foss KD, et al.: Critical components of neuromuscular training to reduce ACL injury risk in female athletes: meta-regression analysis.
Br Sports Med 2016;50(20):1259-66.

PubMed PMID:27251898

  • No.2004-01
  • 執筆担当:
    群馬大学大学院保健学研究科保健学専攻博士後期課程
    河内 淳介
  • 掲載:2020年4月1日

【論文の概要】

 本論文では、女性アスリートの膝前十字靭帯(anterior cruciate ligament: ACL)損傷リスク軽減のための神経筋トレーニング(neuromuscular training: NMT)における、重要要素と組み合わせによる効果を明らかにすることを目的とし、メタ回帰分析を実施した。論文の包含基準は、1)ACL損傷発生率を報告している、2)ACL損傷リスク軽減を目的としたNMTが行われている、3)比較グループがある、4)前向き比較試験である、5)対象に女性を含む、とした。最終的に14編の論文が採択され、構成要素として、対象の年齢、NMTの処方量、NMTの種類、言語フィードバックの有無が抽出された。
 メタ回帰分析の結果、4要素のいずれかが条件を満たすと、ACL損傷リスクが17.2~17.7%軽減されるとした。また決定係数より、変動効果モデルの変動の73%が4要素により説明できるとした。

【解説】

 ACL損傷はスポーツ選手に多い膝関節の障害であり、その発生頻度は男性より女性で3〜5倍多い1)。約70%が非接触型損傷であり2)、スポーツ動作時の動的アライメントの改善を図る予防的介入が注目されている。ACL損傷予防プログラムとして、バランスやプライオメトリックなどを含むNMTが提案され、その有効性が示されている3,4)。しかし報告されているNMTプログラムは多岐にわたり、NMTを構成する要素の最適な組み合わせや相乗効果については不明であった。
 本研究により、女性アスリートのACL損傷リスク軽減のための4つの重要な要素が提示され、それらの要素によりNMTプログラムによる予防効果の73%が説明できるとした。具体的には、4要素のいずれかが条件(開始年齢:10代前半、NMTの処方量:20分以上で週に2回以上、NMTの種類:2種類以上の組み合わせ、言語フィードバックの有無:有り)を満たすことで、ACL損傷リスクの約17%を軽減できることが示された。これらの結果は、最適なNMTプログラムの立案と実施を目指す上で実用的な知識となり得る。
 本論文でレビューされた研究にはいくつかの異なるスポーツが含まれるが、サッカーが多くを占めていた。また、コンタクトスポーツやスキー競技は含まれていない。これら特定のスポーツに対して本研究の結果が適応できるかは不明であり、今後更なる研究が期待される。

【引用・参考文献】

1)Arendt E, Dick R: Knee injury patterns among men and women in collegiate
  basketball and soccer. Am J Sports Med 1995;23(6):694-701.
2)Boden BP, Dean GS, Feagin JA Jr, et al.: Mechanism of anterior cruciate
  ligament injury. Orthopedics 2000;23(6):573-8. 
3)Taylor JB, Waxman JP, Richter SL, et al.: Evaluation of the effectiveness of
  anterior cruciate ligament injury prevention programme training components: a
  systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med 2015;49(2):79-87.
4)Hewett TE, Ford KR, Myer GD: Anterior cruciate ligament injuries in female
  athletes: Part2, a meta-analysis of neuromuscular interventions aimed at injury
  prevention. Am J Sports Med 2006;34(3):490-8.

2020年04月01日掲載

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